最高裁が手錠・腰縄の新運用通知 傍聴人から見えない配慮で被告の人権尊重へ
最高裁が手錠・腰縄の新運用通知 傍聴人から見えない配慮

最高裁が手錠・腰縄の新運用を通知 傍聴人から見えない配慮で被告の人権尊重へ

両手首に手錠、腰には縄がつけられて法廷に入る被告の姿。刑事裁判で長年当たり前とされてきたこの光景が、大きく変わりつつある。最高裁判所は2026年1月、全国の裁判所に対し、傍聴人から見えない位置で手錠や腰縄を外すよう求める通知を発出した。これは、有罪確定までは無罪として扱う「推定無罪」の原則を踏まえ、被告の人権に配慮した重要な措置である。

「罪人のような姿」からの脱却

逮捕や起訴された人は、検察が請求し裁判所が判断する「勾留」により身体を拘束されることが多い。保釈されない場合、手錠や腰縄をつけた状態で法廷に入る運用が定着していた。しかし、弁護士らは長年、この見た目が「被告=罪人」という印象を与え、公平な裁判を妨げるとして改善を求めてきた。

ある無罪判決を受けた女性は「罪人のような姿を息子に見せるのは耐えられなかった」と振り返り、手錠と腰縄による屈辱感を語っている。こうした当事者の声や弁護士の指摘を受け、最高裁は法務省や警察庁と協議を重ね、新たな運用方針を決定した。

新たな運用の具体的なイメージ

最高裁が1月26日に発出した「事務連絡」では、傍聴人から見えないように法廷内で手錠や腰縄を外す具体的な手順が示された。被告が法廷に入る前に、裁判所の職員や警察官が配慮して拘束具を外し、裁判が公平に行われる環境を整えることが求められている。

この動きは、国際的な人権基準にも沿うものであり、欧州や韓国では既に類似の配慮が実施されている。日本でも32年前から一部で議論されてきたが、今回の通知により全国的に統一された運用が期待される。

専門家の評価と今後の課題

国士舘大学教授の鈴木江理子氏は「推定無罪の原則、第三者の前で『罪人』のような姿を晒すことで傷つけられる尊厳、委縮によって阻まれる被告人の主張などを考えれば、当然の要請だ」と評価する。一方で、元裁判官からは「法廷に手錠は合わない。でも…」と変化へのハードルを指摘する声もあり、現場での徹底が今後の課題となる。

この改革は、単なる手続きの変更ではなく、刑事司法の在り方そのものを見直す契機とも言える。被告の尊厳を守りながら、公正な裁判を実現するための第一歩として、その実施状況が注目される。