衆院選投票所に「男女別受付」 東京・千葉5市町村で実施 トランスジェンダーへの参政権侵害懸念
投票所「男女別受付」5市町村で トランスジェンダー参政権懸念 (21.03.2026)

衆院選投票所に「男女別受付」 東京・千葉5市町村で実施

2月に実施された衆議院選挙において、東京都と千葉県の計5市町村が投票所に「男女別受付」を設けていたことが、東京新聞の調査で明らかになった。多様性を重視する現代社会において、この慣行に対して有権者から疑問の声が上がっている。

男女別受付を実施した自治体の実態

東京新聞が東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県に属する212自治体の選挙管理委員会に取材した結果、以下の5市町村で男女別受付が確認された。

  • 千葉県南房総市:投票所27カ所中12カ所
  • 千葉県鋸南町:投票所7カ所中1カ所
  • 千葉県一宮町:全投票所
  • 千葉県睦沢町:全投票所
  • 東京都小笠原村:全投票所

これらの投票所では「男」「女」と記載された張り紙が掲示され、有権者を性別ごとに列に並ばせていた。千葉県南房総市の女性有権者は、昨年の参院選や2024年の衆院選でも同様の経験をしており、「わざわざ分ける必要はない。分けられて傷つく人もいる」と困惑を隠さない。

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自治体側の説明と今後の対応

南房総市の担当者は、男女別受付の理由について「混みやすい投票所で混雑を防ぐため」と説明。さらに、男女別の選挙人名簿を作成していることから、受付段階で性別を分けておくと作業が効率化される点や、国に対して男女別の投票者数を報告する必要があることを挙げた。ただし、男女別受付を設けていない自治体も同様の報告を行えており、この理由には疑問が残る。

同市ではこれまで、市民から性の多様性に配慮して男女別受付を廃止するよう要望があったものの、継続していた。しかし、2026年度から選挙人名簿の管理システムを更新し、入場券のバーコード読み取り機器を導入する計画だ。これに伴い、選挙人名簿を男女混合に変更し、4月投開票の市長選からは男女別受付を廃止する方針を示している。

他の自治体では、鋸南町、一宮町、睦沢町の3町も混雑回避などを理由に男女別受付を継続。小笠原村の担当者は「男女別に並んでもらわないと、男女別人数を集計する手段がない」と述べている。今後の対応については、一宮町が改善を検討している一方、鋸南町は「抵抗感がある人は男女別受付がない期日前投票所を利用してほしい」とし、睦沢町と小笠原村は変更予定がないと回答した。

専門家からの批判と人権侵害の懸念

元川崎市選挙管理委員会事務局長で「選挙制度実務研究会」の小島勇人理事長は、男女別受付の実態について「初めて聞いた」と驚きを示した。選挙権の行使は基本的人権の核心であると指摘し、「多様な性のあり方を踏まえておらず、人権を尊重して対応するべきだ。男女別にする必要はない」と厳しく批判した。

特に懸念されるのは、トランスジェンダー当事者への影響だ。男女別受付は、外見と戸籍上の性別が一致しない人々にとって、望まない形で性別を暴露される「アウティング」のリスクを伴う。性的少数者(LGBTQ)の人権問題に取り組む「レインボー千葉の会」共同代表でトランスジェンダーの上井ハルカさんは、「外見と戸籍上の性別にギャップがある人が、性別を周囲に知られるのを恐れ、投票に行けなくなる。参政権の阻害につながりかねない」と危惧する。

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入場券の性別記載問題と総務省の対応

この問題は、投票所で配布される入場券の性別欄の記載にも関連している。公職選挙法には入場券への性別記載を義務付ける規定はなく、総務省は都道府県に対し、性別欄の「必要性や表現の検討」を求めている。これは、投票所職員による大声での性別確認など、男女の分類に心理的負担を感じる人々への配慮が目的だ。

東京新聞の調査によると、2026年2月末時点で1都3県の212自治体のうち、208自治体が性別欄を記号や数字に置き換えるか、撤廃している。しかし、東京都の三宅村、利島村、小笠原村、神奈川県座間市の4市村では依然として男女表記が残っており、利島村を除く3市村は変更予定がないという。

選挙制度は民主主義の根幹を成すものであり、すべての有権者が平等に参政権を行使できる環境の整備が急務となっている。男女別受付の問題は、単なる効率化の議論を超え、社会の多様性と人権尊重の観点から再検討されるべき課題として浮上している。