高市早苗首相は2日、訪問先のベトナムで演説し、改定した新たな外交方針「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」を表明した。この新方針では、インド太平洋地域の各国が「自律性」と「強靱性」を高めるべきだと強調し、AI(人工知能)や安全保障などを重点分野に位置づける方針を掲げた。
新たなFOIPの重点分野
首相は同日、ベトナム国家大学で行った演説で、新たなFOIPについて言及。具体的な重点分野として、第一に「AI・データ時代の経済エコシステムの構築」、第二に「官民一体での経済フロンティアの共創とルールの共有」、第三に「安全保障分野での連携の拡充」を挙げた。
喫緊の課題である石油関連製品の安定供給に向けては、日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)などとのサプライチェーン(供給網)を強化する必要性を指摘。その上で、ベトナムの製油所に対する原油調達を日本側が支援する方向で調整していることを明らかにした。
さらに、インド太平洋地域における海底ケーブルなどのインフラ整備支援を推進する意向を示し、この取り組みを「FOIPデジタル回廊構想」と名付けると語った。また、同志国の軍に対して防衛装備品などを無償で提供する「政府安全保障能力強化支援(OSA)」の対象国や規模を拡大する方針も示した。
FOIPの背景と高市首相のビジョン
FOIPは2016年に安倍晋三首相(当時)が提唱したもので、アジア太平洋から中東・アフリカに至る地域で「法の支配」を重視し、ルールに基づくインフラ整備や貿易・投資などの強化を目指す方針だった。高市首相は今回、この基本理念を継承しつつ、現代の課題に対応する形で改定した。
首相は同日、ベトナムのレ・ミン・フン首相、トー・ラム共産党書記長兼国家主席と個別に会談。フン氏との会談では、エネルギー分野など経済安全保障において優先的に取り組む項目を確認した。共同記者発表で首相は「日ベトナム関係を新たな高みに引き上げたい」と述べ、フン氏は「FOIPを含む、地域における日本の取り組みを支持する」と応じた。
にじむ「高市カラー」
今回の新方針には、高市首相の外交スタイルが色濃く反映されている。特に「自律性」と「強靱性」の強調は、従来のFOIPにはなかった独自の要素であり、首相の国家安全保障や経済安全保障に対する強いこだわりがにじんでいる。今後、他のインド太平洋諸国との連携や、具体的な協力プロジェクトの進展が注目される。



