米国のイラン攻撃により、ペルシャ湾のホルムズ海峡に自衛隊を派遣するかどうかが焦点となっている。これは、2015年に成立した安全保障法制の審議で、当時の安倍晋三内閣が挙げた事例だった。与党として法案の作成に関わった、公明党元代表の山口那津男・常任顧問に聞いた。
公明党が自民党と連立政権を組んでいた2014年、安倍内閣は日米同盟を強化するため、米国など「密接な関係にある他国」への攻撃に対して、一緒に戦えるように集団的自衛権の憲法解釈を変えました。そして翌年、集団的自衛権を行使できることをふまえた安保法制が成立しました。当時の議論で、政府が想定する集団的自衛権が使える事例として、ホルムズ海峡に機雷が設置されて封鎖された場合に、自衛隊の掃海艇を送って除去することを挙げました。当時を振り返ってもらえますか。
日本が、世界中のどこでも武力行使ができるようになるのは「絶対にだめだ」という立場でした。日本は今世紀に入り、米国主導の戦争に対応して海外に自衛隊を送ってきたが、武力行使は避けてきた。そこへ踏み込めば、日本が痛い目にあった第2次世界大戦の二の舞いになる。ホルムズ海峡のケースはアリの一穴になりかねませんでした。
安倍首相の私的諮問機関である有識者会議が14年5月に集団的自衛権の行使を認めるよう提言し、ホルムズ海峡を念頭に置いたケースにも言及しました。憲法解釈を変える7月の閣議決定に向け、公明党は、自民党や内閣法制局と議論し、自衛権の行使は「存立危機事態」に限ることにしました。他国への攻撃により「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある」という事態です。
ただ、安倍氏は当時、存立危機事態のケースの一つとしてホルムズ海峡を示すことにこだわりました。有識者会議や外務省には、1990年の湾岸危機の際に米国から求められた多国籍軍への参加が憲法上の理由でできず、日本は中東の原油に頼っているのに自衛隊を出さない、と批判された「湾岸のトラウマ」を克服しようという意識が強かったわけです。
もともと集団的自衛権の行使を認めるべきだという立場の安倍氏としては、有識者会議の提言を受け、とにかく幅広く対応できるようにという考えだったのでしょう。
政府のそもそもの説明は、日本周辺で活動する米軍への攻撃を放置すれば、日本への攻撃、つまり武力攻撃事態に等しい事態に直結するから、憲法の下で容認される自衛の措置の解釈を広げて対応するというものでした。しかし、例外のような形でホルムズ海峡のケースが出てきた。他国同士の戦争でペルシャ湾からの原油輸入が止まったからといって、すぐに「国民の権利が根底から覆される明白な危険」があるので、日本が武力で打開しなければいけないという事態なんてありえません。国際社会や日本の外交努力もあるし、他の輸入ルートや国内備蓄もある。さらに議論が必要でした。
――どのように進めたのでしょう。
政府が存立危機事態だと判断する基準を厳格に定めるよう求めました。最終的に、ホルムズ海峡のケースは存立危機事態に該当する可能性はあるが、実際に派遣するかどうかは個別の状況判断によるという整理になりました。これにより、安倍氏のこだわりを完全には排除できなかったものの、安易な武力行使を防ぐ歯止めをかけることができました。



