エマニュエル・トッド氏とオードリー・タン氏が、2030年に向けた世界の行方を語る書籍『2030 来たるべき世界』が注目を集めている。同書は朝日新書から刊行され、990円で販売中。すでに5刷、5万3000部を記録している。
世界が直面する課題
2030年、世界はどのような姿を見せているのだろうか。激変する国際情勢、先進諸国における人口減少と高齢化、移民問題、人工知能(AI)による社会変革、そして国際社会における日本の立ち位置や安全保障など、考えるべき課題は山積している。
トッド氏の「西洋の敗北」論
本書は、2025年に行われたエマニュエル・トッド氏の講演やパネルディスカッションを中心に、オードリー・タン氏へのインタビューなどを収録。まさにこれからの時代に向けた刺激的な考察と提言が満載だ。ソ連崩壊や米国発の金融危機を「予言」したことで知られるトッド氏が展開する「西洋の敗北」論は、日本にいる我々からするとかなりラディカルな内容であり、冷静な読み取りが必要な部分もある。しかし、講演を受けて行われた鼎談の章では、異なる意見を粘り強く積み重ねることの大切さ、議論の重要性が浮き彫りになっている。
タン氏のデジタル民主主義
議論を尊重し、市民参加型のデジタル民主主義を台湾社会で大胆に推進してきたオードリー・タン氏のインタビューは、これからのAIやデジタル共生社会に向けて多くの示唆に富む。プルラリティー(多元性)を基盤とし、その差異をデジタル技術でつなぎ、透明性のある議論と共創の場を構築するというアプローチは、台湾ですでに数々の実績を上げている。
一方で、デジタル技術の最前線にいるタン氏のスマートフォンとの付き合い方はユニークだ。複数のSNSを使いこなしながらも、スマホの画面は白黒表示に設定し、自身のめり込みにブレーキをかける。また、情報が自分好みにカスタマイズされる機能をカットしている。「機械を人に合わせる」というスタンスを貫いているのだ。
未来に向けて
あらゆる情報と接しながら、我々は未来に向かう。情報の受け取り方にも注意が必要だろう。それは未来を左右するからだ。本書は、そんな未来を考えるための貴重な一冊となっている。
エマニュエル・トッド氏は1951年フランス生まれの歴史家、文化人類学者、人口学者。著書に『帝国以後』『西洋の敗北』『西洋の敗北と日本の選択』などがある。



