日本政府が7月にも、太平洋戦争中にバシー海峡で戦死した旧日本軍兵士らが漂着したとされる台湾南部の海岸で、遺骨発掘調査を行う方向で最終調整していることが明らかになった。複数の政府関係者が明かした。台湾での遺骨収容は、日本と台湾の外交関係が存在しないことから長らく遅れていた。今回の発掘は約半世紀ぶりとなる。
調査の概要と背景
発掘調査は7月下旬頃、台湾南部・屏東県の海岸で、厚生労働省から事業委託を受ける一般社団法人「日本戦没者遺骨収集推進協会」が約2週間にわたって実施する見通しだ。対象となるのは、台湾とフィリピンの間に位置するバシー海峡周辺で米軍に撃沈された日本の艦船から、屏東県に漂着した兵士らの遺骨である。バシー海峡は「輸送船の墓場」と呼ばれ、多くの艦船が沈められ、計10万人以上が犠牲になったとされる。
現地の証言と協力
政府関係者によると、屏東県の恒春半島には多数の遺体が漂着したと現地で伝えられている。台湾在住の日本人が独自に調査し、台湾住民による火葬や埋葬の証言を収集。同協会は昨年現地で聞き取りを行い、その信ぴょう性が高いと判断した。日台関係が良好であることや、台湾側の協力を得られることも発掘調査実施の要因となった。
DNA鑑定と身元特定
発掘調査では、遺留品などから遺骨が日本人である可能性が高いと判断された場合、検体を日本に持ち帰りDNA鑑定を実施する。ただし、火葬の影響など遺骨の状態によっては持ち帰りを見送る可能性もある。戦後80年が経過し遺族が減少しているため、身元特定は容易ではないとみられる。
過去の遺骨収容
厚生労働省によると、台湾での戦没者遺骨発掘は、日台断交直後の1975年頃に行われて以来となる。当時は日本政府が対台湾窓口機関に委託し、屏東県の墓地に仮埋葬されていた遺骨242柱を収容した。これらは台湾南部・高雄沖で兵員輸送船団が潜水艦攻撃で沈没した際の犠牲者だった。
新たな取り組みの意義
日本政府はこれまで、沈没艦船などに残る「海没遺骨」や遺体漂着後に埋葬された遺骨の調査をほとんど行ってこなかった。戦没者遺骨収集に関する政府の有識者会議メンバーである帝京大学の浜井和史教授は「外交上の理由から高い壁があった台湾での発掘調査が行われることは新しい取り組みで、大きな意義がある」と述べている。



