北方領土・歯舞群島の貝殻島周辺で行われるコンブ漁が、今年も1日に始まり、60回目の節目を迎えた。ロシアが実効支配する北方四島海域での漁は、1963年に日ソ間で民間協定が結ばれて以来、中断を挟みながらも続けられてきた。高級品として知られる「貝殻島産」コンブだが、近年は水揚げ量が減少しており、気候変動などの厳しい環境下で漁を持続する方法が課題となっている。
漁の現状と課題
1日午前7時過ぎ、根室市の納沙布岬から約180隻のコンブ漁船が一斉に出漁した。約3.7キロ先の貝殻島灯台周辺海域で漁を終え、午前10時頃には珸瑶瑁漁港に戻ったが、多くの船には不漁を示す黄色い旗が掲げられた。漁師の高橋悠汰さん(20)は「ないない。だめだ」と厳しい表情を見せた。一方、父の大樹さん(51)は「質のいいのもある」と今後の生育に期待を寄せる。不漁のため、歯舞漁協は12日まで休漁としている。
高橋さんは岩手県内の高校を卒業後、コンブ漁師となり、今年新造船「第51海幸丸」(1.2トン)を建造した。人口減少で後継者が不足する中、ベテラン漁師たちの期待は大きい。
資源保全への取り組み
貝殻島周辺で採れる「棹前コンブ」は、成熟前のナガコンブで、身が軟らかく、昆布巻きやつくだ煮、サラダに適している。漁期は約1か月と短く、貴重さと味わいから高いブランド力を誇る。
しかし、後継者確保と資源保全が大きな課題だ。1963年の漁では300隻で1195トンを水揚げしたが、2024年には195隻で38トンにまで落ち込んだ。2025年は286トンとやや回復したが、依然として厳しい。海水温上昇によりコンブの着生が減少しているとされ、歯舞漁協は3年前から鉄鋼スラグと腐植土を混ぜた資材を投入し、着生促進事業を実施。5月には根室市双沖の砂浜にも同資材を埋めた。小倉啓一組合長(76)は「天然に頼っていては漁場は再生できない。我々が手を加えていくしかない」と語る。
日露関係と歴史
北方四島海域の漁は、緊張が続く日露関係を反映し、政府間交渉が停滞する中、貝殻島のコンブ漁だけは民間協定により操業が続けられてきた。今年の交渉も2日間で妥結し、信頼関係が維持されている。
戦後、貝殻島と納沙布岬の間に「中間ライン」が設定されたが、ソ連による漁船拿捕事件が多発。そこで、元通産相の高碕達之助氏が大日本水産会長として交渉し、1963年に日ソ民間協定を締結。1977年にソ連が操業停止を通告したが、川端元治氏らの尽力で1981年に再開された。この民間協定は、北方墓参の実現にもつながった。漁業関係者は、培われた信頼関係が他の漁種の交渉にも生かせるのではと期待している。
関連商品
歯舞漁協は、棹前コンブを使った「歯舞早煮元昆布」(100グラム入り税込み902円)や「歯舞細切り昆布」(同610円)を直売所で販売。また、「はぼまい昆布しょうゆ」などの調味料をネット販売している。



