経営再建中の日産自動車が、車種を絞り込みつつ販売を増やす長期ビジョンを打ち出した。大規模なリストラを進めて再成長を目指す姿は、かつてのカルロス・ゴーン元会長のもとでの改革に重なる。当時、ゴーン氏の右腕だった元最高執行責任者(COO)の志賀俊之氏(72)が朝日新聞のインタビューに応じ、過去の失敗を踏まえ、規模を追うよりも顧客のニーズを正しく捉えた車をつくる必要性を訴えた。
志賀氏が語る日産の現状と課題
――日産が4月14日に出した長期ビジョンをどう評価しますか。
「ゴーン氏がいなくなってからの日産は、経営者のメッセージが必ずしもはっきりしないところがありました。そこに、あの通り明るい性格のイバン・エスピノーサ氏が社長に就き、長期ビジョンを出した。会社が何をやろうとしているかというメッセージが明確になりました」
「日産社内には、開発や生産分野の優秀な人材が残っています。AI(人工知能)を使った自動運転や販売台数の目標を掲げたビジョンには、疑問の声も聞こえないわけではないし、実行するのは大変です。それでも従業員にとっては、明確なゴールに向かって走るほうが分かりやすい。まずは社内が元気じゃないと何も始まりません」
過去の失敗から学ぶべき教訓
志賀氏は、ゴーン時代の過大な目標設定や値引き依存の販売戦略が、後に日産の経営を圧迫したと指摘。元社員のアナリストも、過大な目標と値引き依存のジレンマが日産を苦しめたと分析している。志賀氏は「規模を追うよりも、顧客が本当に求める車を開発することが重要だ」と強調する。
――日産は2030年度までに日本で55万台、米国と中国でそれぞれ100万台の販売を目指す考えです。車種も56から45に絞ります。
「世界全体で350万台規模…」と志賀氏は続ける。都内マンションが1億円を超え、車を持てない時代において、日産はどのような戦略を取るべきか。志賀氏は、単なる台数目標ではなく、収益性と顧客満足度を両立させる車づくりが必要だと訴える。
エスピノーサ流の改革と今後の展望
エスピノーサ社長は「スピード」を重視し、低迷する日産の復調を目指す。日産は長期ビジョンで新車投入による攻勢を打ち出し、再建は次のフェーズに入った。しかし、慶大卒、アクセンチュアを辞めて銀座ですし職人になった30歳の野望や、部下が上司を誘って移住し香川でイチゴ農家になるといった事例に見られるように、多様な働き方や価値観が広がる中、自動車業界にも変化が求められている。
志賀氏は「日産が生き残るためには、過去の成功体験に固執せず、常に顧客の視点に立った革新が必要だ」と語る。スカイラインやGT-Rといった象徴的な車種だけでなく、時代のニーズに合った車を提供できるかが、日産の未来を左右するだろう。
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