創業102年の老舗「神田軒」、福島市民に愛され続ける味の歴史
福島市中心部に佇む和風建築の店構え。のれんやショーケースに並ぶ食品サンプルが懐かしい雰囲気を醸す中、3代目店主の遠藤晴男さん(69)は店の前で笑顔を見せる。「常連さんの支えのおかげで続けていられる。その一言に尽きる」と感謝の言葉を口にする。1924年(大正13年)創業の「神田軒」は、今年で創業102年を迎え、大正から令和にかけて1世紀にわたり市民に愛され続けてきた老舗ラーメン店だ。
創業前の屋台時代から続くラーメン文化の礎
神田軒の歴史は、創業前の1920年前後にさかのぼる。晴男さんの祖父である初代の遠藤竹蔵さんが福島駅前でラーメン屋台を始めたのが起源だ。当時、駅前では屋台主が連合を組んでラーメンやワンタンを提供しており、福島市のラーメン文化の長い歴史を物語る。1924年には市中心部の陣場町に店を構え、1931年には現在の宮下町に移転。ラーメン一本で経営を軌道に乗せた。
2代目の遠藤正晴さんが継いだのは1948年。夏の売り上げ低下というラーメン業界の課題を克服するため、日本そばの修業を積み、メニューの幅を広げた。この頃に始めた「冷やしラーメン」は、当時県内でまだ珍しかった冷やし中華とは一線を画す味わいで、酸味が強くない独自の工夫が施され、根強いファンを獲得している。
3代目による四川料理の導入と家族経営の継承
幼少期から厨房で父の姿を見て育った晴男さんは、家業を継ぐため高校卒業後に上京。20代後半まで約8年間、四川料理の修業を積んだ。1982年に帰郷し、店のメニューに四川料理のバリエーションを加えた。当時は四川料理の知名度が低く、「シカワ料理って何だい」と聞かれることもあったという。現在では、ホイコーローやエビチリ、マーボー豆腐など多彩なラインアップが人気を博している。
メニューは創業時からの「ワンタンメン」をはじめ、ラーメン類、そば、うどん、丼物、四川料理など約50種類。麺類やワンタンは全て自家製麺にこだわり、料理の一つ一つに親子3代が紡いできた歴史が詰まっている。現在は4代目の長男である丈晴さん(45)も加わり、家族4人で店を営んでいる。
長続きの秘訣と常連客からの信頼
長続きの秘訣を尋ねると、晴男さんは「特徴がないから、飽きがこないんじゃねえか」と謙虚に笑う。しかし、常連客の一人はこう語る。「『俺が俺が』と前に出て主張するような派手さがない裏に、実直で丁寧な仕事が見える。そういう味にほれ込んでいる」。100年前に初代が築いた味を守りながら、2代目、3代目と色を重ねてきた神田軒の実直な姿勢が、地域に根付いた支持を生み出している。
1920年代に設立された屋台組合「福島ワンタン露商組合」の定款には、初代の遠藤竹蔵さんら役員9人の名が記されており、福島市にラーメン文化が根付いたルーツを垣間見ることができる。晴男さんは「最初にワンタン屋台が入り、その後ラーメンと一緒に売るようになったようだ」と歴史を振り返る。
神田軒の基本情報
- 住所:福島市宮下町3の11
- 電話:024・534・4831
- 営業時間:午前11時~午後7時50分
- 定休日:木曜日
- 主なメニュー:ワンタンメン(750円)、担々麺(醤油・味噌、800円)、冷やしラーメン(650円)、ざるそば(550円)、回鍋肉片(ホイコーロー、1000円)