ロボット、人工知能(AI)、宇宙技術といった最先端科学技術は、私たちの生活に大きな恩恵をもたらす一方で、軍事にも応用できる危険性をはらんでいる。この「デュアルユース(軍民両用)問題」は、技術的知見なしには理解が難しい。『軍民両用化する技術』(光文社新書、1210円)の著者で、自衛官の経歴を持つ大庭弘継さんは、「どんな技術も軍民両用になる。解決策を探るには、両用が生じる仕組みを知る必要がある」と語る。
科学技術の功罪を紹介
本書では、宇宙技術やバイオテクノロジー、ロボットなど、さまざまな科学技術の功罪を紹介。例えば、たんぱく質の立体構造を解析するAIは創薬などに応用できる一方で、類似のAIは4時間で4万種以上の強力な毒物の組成を明らかにしたという。大庭さんは「危機的な状況に陥った時、よりましな判断を下すための基礎知識集にしたかった」と述べている。
著者の経歴と問題意識
福岡県出身の大庭さんは、幼い頃に吉田満の『戦艦大和ノ最期』に登場する臼淵磐大尉の言葉「日本ノ新生ニサキガケテ散ル」に影響を受け、「彼らの義務感を引き継ぎ、同じような生き方をしたい」と海上自衛隊を目指した。米国同時テロ後のインド洋への派遣も経験し、テロの脅威を前に自衛のための武力行使の決断や責任の所在という「究極の選択」を研究するため、約8年の勤務を終えた。その後、民族浄化を阻止する軍事介入などを中心に研究しつつ、デュアルユース問題に取り組んだ『軍事研究を哲学する』を2022年に共著し、多様な分野の知見を得た。
現実の脅威と今後の課題
ウクライナとの戦争を続けるロシアの兵器には、日本を含む各国で生産された部品が使われている。また、最新鋭のAIモデルは、これまでにない自律的な動きを示す。大庭さんは「善悪や要不要は、人が置かれた状況に依存する。普遍化してはっきりとは言えないが、決断を下す時は来る。それまでは、悩み抜いて良いと思う」と語る。



