ES細胞から作った内耳組織の移植で平衡障害が改善、京都大などマウス実験で確認
ES細胞から内耳組織を移植、平衡障害が改善 京大など確認 (15.03.2026)

ES細胞から作った内耳組織の移植で平衡障害が改善、京都大などマウス実験で確認

めまいやふらつきなど、治療が困難な平衡障害に対して、ES細胞(胚性幹細胞)から作製した内耳組織を移植することで症状が改善する可能性が、マウスを用いた実験で確認されました。この研究成果は、京都大学と藍野大学(大阪府茨木市)の共同研究チームによってまとめられ、日本再生医療学会で発表されます。

平衡障害の現状と治療の難しさ

耳の奥にある内耳に障害が生じると、難聴だけでなく、激しいめまいやふらつきが引き起こされます。平衡障害は、頭の傾きを感知する内耳の「有毛細胞」が加齢などによって減少することが主な原因です。有毛細胞は一度損傷するとほとんど再生しないため、根本的な治療法がなく、多くの患者が苦しんでいます。

藍野大学の田浦晶子教授(耳鼻科)によると、国内には約250万人の平衡障害患者がいると推定されています。特に高齢患者では、めまいによる転倒で骨折し、寝たきりになるリスクが指摘されており、早期の治療法開発が求められています。

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マウス実験での成果と改善効果

研究チームは、マウスのES細胞を使用して、有毛細胞を含む内耳組織(大きさ1~2ミリメートル)を作製しました。この組織を、有毛細胞が減少し、絶えずふらついて回転するなどの症状を示す平衡障害マウスに、手術器具を用いて耳の穴から移植しました。

その結果、移植から1か月後には、マウスが回転せずに歩けるようになるなど、明らかな改善効果が観察されました。この成果は、ES細胞由来の内耳組織が、平衡機能の回復に有効であることを示しています。

iPS細胞を用いた人への治療を目指して

チームは、人のiPS細胞(人工多能性幹細胞)からも内耳組織の作製に成功しており、人での臨床研究を目標に掲げています。現在、難聴治療で行われている人工内耳の手術では頭部の皮膚を切開する必要がありますが、内耳組織の移植は耳の穴を通じて行うことが想定されており、体への負担が少ない手法として期待されています。

田浦教授は、「人の治療に応用するには安全性の確認など、まだ越えなければならないハードルがありますが、一生治らないと苦しむ患者に、できるだけ早くこの治療を届けたいと考えています」と述べています。

専門家の評価と今後の展望

iPS細胞を使った内耳の研究に詳しい藤岡正人・北里大学教授(分子遺伝学)は、「マウスの行動に改善が認められ、移植による治療法の実現に近づく大きな一歩です。耳から移植する手法は体への負担が少なく、今後の実用化に向けて、さらなる研究開発が期待されます」とコメントしています。

この研究は、再生医療の新たな可能性を拓くものとして、平衡障害患者への希望をもたらすとともに、ES細胞やiPS細胞を活用した治療法の開発が進むことが期待されています。

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