AI分析で浮かび上がる認知戦の実態
中国やロシアなどの権威主義国家が仕掛ける認知戦は、SNSを中心としたインターネット上の言論空間が主戦場と指摘されてきましたが、その具体的な実態は長らく不明瞭なままでした。読売新聞社は、この認知戦の実態を可視化するため、SNS上の投稿内容の分析に本格的に取り組むことを決定しました。その過程で、AI(人工知能)の技術的利点を最大限に活用する方針を打ち出したのです。
40万件の投稿を瞬時に解析
読売新聞オンラインが協力した新興企業サカナAIが開発したAIシステムは、高市首相の国会答弁前後にSNS上で発信された約40万件の投稿を瞬時に分析し、複数の仮説を導き出しました。この分析結果には、記者が従来の取材活動の中で漠然と感じていた内容を裏付ける仮説も多く含まれており、記者はこれらの仮説を新たな材料として取材を重ね、認知戦の実態に迫ることができました。
データジャーナリズムの手法が高度化したことで、これまで見えにくかった認知戦の構造を明らかにすることが可能になったと、読売新聞社は考えています。AIを駆使した分析は、膨大なデータの中からパターンや傾向を抽出し、人間の直感だけでは捉えきれない事象を浮き彫りにしました。
AI利用は厳格に制限
読売新聞社は、通常の取材活動において安易にAIを利用しないよう、厳しい規制を設けています。今後も、人力では処理が不可能な大量データの分析など、必要不可欠な取材場面でのみAIを活用し、従来の報道手法では解明が困難だった事象の真相に取り組んでいく方針です。このアプローチは、報道の質を維持しながら、新たな技術を効果的に導入する模範例と言えるでしょう。
認知戦の実態解明は、民主主義社会における情報の健全性を守る上で極めて重要です。読売新聞社の取り組みは、AIとジャーナリズムの融合が、現代の複雑な課題に対処する有力な手段となり得ることを示しています。



