バイオリニスト金川真弓、バッハの無伴奏全曲に挑戦 響きと内省を重視した演奏へ
国際的に活躍するバイオリニストの金川真弓が、2026年3月7日と8日の2日間にわたり、彩の国さいたま芸術劇場(埼玉県さいたま市)で、バッハの無伴奏バイオリンソナタ&パルティータ全6曲を演奏する。この至高の名曲に満を持して挑む心境について、金川は独自の音楽観を語った。
無伴奏演奏の試練と責任
金川は、バイオリニストにとって無伴奏で演奏することは大きな試練だと指摘する。「バイオリンは基本的に人と一緒に弾く楽器です。無伴奏では他の演奏者から音楽のエネルギーをもらうことができません。その分、責任は非常に重いんです」と語る。限られた音を横につなぎ、一本の線として流れを作り出すことで、縦のパルス(脈動)を生み出し、「歌」と「踊り」の要素を凝縮した情感が聴き手の心を揺さぶる。バッハの無伴奏は奇跡のような曲であり、同時にバイオリニストに最高度の技巧と音楽理解を要求する作品だ。
響きを大切にした独自のアプローチ
金川は、作曲当時の演奏スタイルを重視するピリオド奏法も参考にするとしながらも、知的なアプローチに加えて、音の一つひとつに生命を吹き込むかのような演奏を心がけている。「音楽が持つコンテキスト(文脈)をどのように楽器で語るか。色々なやり方がありますが、私は音楽の構造分析と同時に、バイオリンが持つ『響き』も大切にしたい」と強調する。この姿勢は、彼女の多様な音楽的背景に根ざしている。
国際的な経歴と音楽的成長
日本人の両親のもとでドイツに生まれ、4歳からは米国で育ち、高校卒業後に再びドイツに渡ってすでに15年が経過している。金川は、ロシア楽派の流れをくむ米国の流儀と、フランコ・ベルギー楽派を継承する欧州の流儀の両方になじみ、唯一無二の個性を開花させてきた。日本では協奏曲のソリストとしてオーケストラと共演することが多いが、欧州では室内楽やリサイタルが中心であり、少人数の奏者と親密な関係を築き、協調して音楽を作る経験を通して、演奏において自省することを学んだという。
内面を見つめた演奏への挑戦
「すでに無数の名演があるバッハの無伴奏に挑むからには、新たに何ができるのかを自問自答しなければいけない」と金川は語る。テクニックではなく自身の内面を見つめ、最後は直感を信じて弾くことを重視している。演奏会では、「音楽でおしゃべりする」ことを心がけ、聴衆と深い共感を築くことを目指す。
公演は両日とも午後3時開演で、問い合わせは電話(0570-064-939)まで。この演奏会は、クラシック音楽愛好家にとって、金川真弓の芸術的成長とバッハ作品への深い洞察を体験できる貴重な機会となるだろう。