益田ミリさん新作『中年に飽きた夜は』 50歳の誕生日をファミレスでハイボールを傾けながら描く
益田ミリ新作『中年に飽きた夜は』 50歳の誕生日をファミレスで描く (06.04.2026)

深夜のファミレスで紡がれる50歳の物語

漫画家でありイラストレーターの益田ミリさんが、新作『中年に飽きた夜は』(ミシマ社)を刊行した。この作品は、深夜のファミレスを舞台に、50歳の誕生日を迎えた女性たちが、心身の変化を関西弁で漫才のように語り合う会話劇として構成されている。書面インタビューに応じた益田さんは、「日記を書くみたいに原稿に向かっている感覚があります」と創作の心境を明かした。

ファミレスで交わされる軽妙な会話

物語の中心には、50歳の誕生日を迎えた純子が登場する。彼女は深夜のファミレスで角ハイボールを傾けながら、背後で同世代の女性2人が漫才のネタを話し合う様子に耳を傾ける。その会話は、「本音をどう自虐に持っていかずにお笑いにするか、やと思う」といった核心を突く内容で、テンポ良く展開される。

純子は次第に、仕事が終わるとファミレスへ足を運び、2人の会話を聞くことを習慣とするようになる。そこから得られるささやかな活力が、明日への希望を紡いでいく。益田さんは、「カラッとした明るさを意識しました」と語り、中年の危機という概念を超え、人生100年時代における50歳を折り返し地点として前向きに描いている。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

大阪生まれの独特の雰囲気を反映

益田さん自身は東京暮らしが長いが、生まれ育ちは大阪である。この作品では、大阪の街中で耳に入ってきそうな会話劇を目指したという。「大阪に帰ると、電車の中で聞こえる会話が新鮮。自分たちの会話で周囲の人がちょっと笑ってくれたら勝ち、みたいな感覚は大阪独特の雰囲気だなぁと」と、地元の文化を作品に反映させた意図を説明する。

作中では、人の名前が出てこない、立ち上がる時にかけ声を発するといった、年を重ねた人々の“あるある”が次々と登場する。しかし、内容には自虐的な要素は感じられず、明るく軽妙なトーンが貫かれている。主人公たちは「人生折り返しなどしないで、みんなで進んでいくのがええやんか」と前向きな姿勢を示し、読者は2人の会話と純子の内面の共感を俯瞰して楽しめる構成となっている。

女性の日常に寄り添う創作スタイル

益田ミリさんは1969年生まれで、「イラストの仕事をしているうちに漫画を描き始めた感じ」と語る。これまでに、『今日の人生』シリーズなどのコミックエッセーと、『すーちゃん』シリーズのようなフィクション漫画の双方で、女性の日常にそっと寄り添い、伴走する作品を生み出してきた。

新作『中年に飽きた夜は』は描き下ろしで、一気に仕上げられたという。「前日に描いたシーンを、翌朝の自分が笑えたかどうかを基準に、描き進めていきました」と、創作プロセスを振り返る。また、作品の特徴として余白の味わいを挙げ、作中の文字は大小での強調がなく、フキダシの中に自然な余白が生まれるようにしている。「どの言葉を大きく捉えるかは、読んだ方それぞれに委ねたい」という思いからだ。

漫画家デビュー25周年を迎えて

益田さんは、『ツユクサナツコの一生』で2024年に手塚治虫文化賞短編賞を受賞し、今年は漫画家デビュー25周年を迎える。次回作について、「今年は創作漫画の連載が始まる予定で、すでに新しい主人公と歩き始めています。早く読んでいただきたいな、とわくわくしています」と語り、ファンへの期待に応えようとしている。

この作品を通じて、益田ミリさんは中年期の女性たちの心情を、軽やかで温かい眼差しで描き出し、読者に共感と活力を与える物語を届けている。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ