地域に愛される100年の参詣鉄道「水間鉄道」
大阪府貝塚市を走る水間鉄道は、2024年に開業100周年を迎えました。1924年、繊維産業で栄えた地元有志によって設立されたこの鉄道は、古くから厄除け観音として信仰を集める水間寺への参詣鉄道として親しまれてきました。現在も南海電鉄貝塚駅から終点・水間観音駅までを約15分で結び、地元住民の生活路線としても機能しています。
水間鉄道の塘田孝典さんは、「沿線の小学校に通う子どもたちの利用も多く、地域密着の路線です」と語ります。昭和40年代までは乗客過多で遅延が発生するほどの人気を誇りましたが、利用者の減少に伴い、現在はバス事業も展開。電車運転体験やオリジナルヘッドマークの装着サービス、春休みや夏休みには車内で駄菓子を販売する「駄菓子電車」など、ユニークな企画で地域外からの利用客増加を目指しています。
「テツふる」で地域を支援
貝塚市は水間鉄道の開業100周年を機に、昨年12月から「テツふる」事業に参画しました。これは現地消費型ふるさと納税を活用した地方鉄道・沿線自治体支援の取り組みで、鳥取県若桜町・八頭町(若桜鉄道)、石川県穴水町(のと鉄道)、長崎県島原市(島原鉄道)も参加しています。
専用サイトから「テツふる」参加自治体に寄付すると、返礼品として寄付額の30%相当の地域限定デジタル商品券が即時にスマートフォンへ発行されます。この商品券は、参加鉄道会社の体験メニューやグッズ購入、地域の飲食店での支払いに利用可能です。鉄道があることで町が元気になる、三方良しの取り組みです。
実際に「テツふる」を使ってみた
貝塚駅で「テツふる」を利用して寄付を行うと、すぐにデジタル商品券が届きました。「水間寺ご祈祷付き電車・バス1日フリー乗車券」や「硬券入鋏体験」などのメニューから希望を選び、改札口の二次元コードで支払えば、その場で乗車券などが手渡されます。さっそく1日乗車券を購入し、2両編成の電車に乗り込みました。
車窓にはのどかな郊外風景が広がります。無人駅の駅舎には昭和世代には懐かしい掲示板や、地元の子どもたちからのメッセージが書かれた旗が飾られ、温かい雰囲気に包まれています。終点の水間観音駅に到着すると、開業当時の面影を残す文化財指定の駅舎が出迎えてくれます。
水間寺の歴史と寺僧制度
水間観音駅から徒歩すぐの水間寺は、天平時代の744年に聖武天皇の勅願により創建されたと伝わります。聖武天皇が病を癒やすため、行基上人に霊地を探させたところ、水間の地で聖観音像を持った老翁に出会い、その像を都に持ち帰ると病が快癒したことから建立されました。
同寺の特徴は「寺僧制度」。読経を補佐する地元の人々が僧籍となり、日々の運営を担っています。貫主は比叡山の大僧正が務める一方、座中と呼ばれる地域住民が寺を支える全国的にも珍しい制度が今も続いています。
地域に根ざした鉄道で、地域が守ってきた古刹を訪れる。初夏の青空の下、貴重な鉄道旅のひとときを楽しみました。
(文/奥紀栄 写真/酒井羊一)
「テツふる」は日本各地の「鉄道があるまち」への訪問と店舗での購買による応援を通して、沿線地域の活性化を目指すプロジェクトです。詳細は月刊「旅行読売」2026年7月号をご覧ください。



