山形県産サクランボの収穫量が過去50年で最低に、異常気象と品種偏りが要因
山形県産サクランボの昨年の収穫量が8310トンと、過去半世紀で最低となったことが農林水産省のまとめで明らかになった。これは2年連続の不作であり、近年の異常気象が主要な原因とされている。さらに、主力品種である「佐藤錦」への偏った栽培構造も背景にある。県や各農協は本年産に向けて、農家の栽培費用への補助など対策を進める方針だ。
異常気象による授粉不足と高温障害が深刻化
県園芸大国推進課によると、2024年の8590トンに続く不作で、過去50年間で収穫量が1万トンを割った年はわずか6回しかない。昨年春の開花期には強風と降雨が続き、ハチの活動が低調となったため授粉がうまくいかず、佐藤錦が結実しなかったことが主な原因だ。加えて、夏の猛暑により成熟が急激に進み、収穫が間に合わなかったことも大きな打撃となった。
かつての不作は主に霜害が原因だったが、近年では天候不良や高温障害が多発している。約20アールの畑でサクランボを栽培する上山市阿弥陀地の農業、枝松博さん(75)は「昨年は風が強く、花が満開なのにハチがほとんど飛ばなかった。土日返上で毎日人工授粉を試みたが、収穫量は2~3割減少した」と苦境を語る。
授粉用ハチの不足と品種偏りが課題に
対策として、授粉用のハチの数を増やす方法が検討されているが、そもそも授粉用のマメコバチが全国的に減少傾向にあり、猛暑による繁殖の困難さも問題だ。代わりにミツバチの導入も進められているが、全国的な需要に対して養蜂場からの供給が追いつかず、JA全農山形でも必要数の確保は厳しい状況にある。
また、花粉を飛ばすための専用の木を植える手法もあるが、既存の収穫用の木を倒して一から植え替える必要があり、多大なコストと数年単位の時間がかかるという。さらに、生産量の約7割をブランド品種である佐藤錦が占める偏りも深刻な課題だ。開花期や収穫期が同じタイミングで訪れるため、悪天候や猛暑が重なると全体が不作となるリスクが高い。
県や農協による対策と支援策の展開
時期を分散させるため、JAなどは「紅秀峰」など他品種への切り替えを促しているが、植え替えが必要なため、なかなか進まないのが実態だ。不作を受けて、吉村知事は昨年11月に鈴木憲和農相に対し、全国的なミツバチの供給体制の確立と、老朽化した雨よけハウスや農機・施設の更新費用の負担を要望した。
県は、25年度2月補正予算案と26年度当初予算案に計1億3600万円を計上し、農家によるミツバチの購入や佐藤錦に代わる品種の苗の導入費用を支援する方針を打ち出している。県園芸大国推進課の深瀬靖課長は「授粉を確実に行い結実を確保することが大前提だ。ハチや苗木を一つでも多く確保できるように支援を行い、サクランボ産地を守り抜いていく」と決意を表明した。
この状況は、気候変動の影響が農業に直撃していることを浮き彫りにしており、持続可能な産地維持に向けた早急な対策が求められている。