津市、合併で拡大も中心部衰退 投資は周辺優先で再生遅れる
津市、合併で拡大も中心部衰退 投資は周辺優先

平日の昼間にもかかわらず、多くの店舗がシャッターを閉め、人通りもまばらな三重県津市中心部の大門商店街。県庁所在地の中心商業地としては寂しい光景が広がる。「この20年で人も店もぐんと減った」。大門で生まれ育った90代の男性はため息混じりに語る。

合併後、中心部への投資は後回しに

「平成の大合併」から20年以上が経過した。三重県では2003年から2006年にかけて、69市町村が29市町に再編され、行財政の効率化や行政基盤の強化を目的に合併が進められた。人口減少時代を迎え、広域化した自治体のあり方とその効果が問われている。

津市は2006年1月、旧津市を含む10市町村の合併により誕生。市域は奈良県境まで約7倍に拡大し、面積は県内最大の710平方キロメートルとなった。合併時の人口は約29万人だったが、現在は26万人台に減少している。

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新市は、まちづくりに活用できる総額710億円の合併特例債を手にしたが、旧市町村ごとに掲げた重要課題の「約束履行」を優先。旧役場の支所への建て替えや文化施設の整備などを各地域で進めたため、中心部への主な投資は道路整備の約13億円と全体の約2%にとどまった。

旧津市が地盤の市議は「津市が大きくなった分、思い切った投資が難しくなり、中心部の再生は後手に回った」と振り返る。

シンボル消失、人口減少と高齢化

城下町として発展した大門・丸之内地区の人口は2025年に1927人で、合併前から20年間で約3割減少。高齢化率も2020年に39%と、市全体の29%を上回る。

商店街のシンボルだったアーケードは2018年に撤去され、2019年には市の第三セクター運営の複合ビル「津センターパレス」からスーパーが撤退。個人商店も後継者不在などで廃業が相次いでいる。

津駅前再開発で打開へ

「県都の玄関口にふさわしい駅にしたい」。2011年の初当選から4期目に入った前葉泰幸市長は、市街地空洞化の打開策として津駅前の再開発に本腰を入れ始めた。市とJR東海が駅東口で所有する計約7100平方メートルの敷地で、官民で最大30階建て相当のビル建設と、鉄道やバス、タクシーなどを集約する交通ターミナル「バスタ」を誘致する。

ビル建設に関して市がコンサルティング会社に委託した調査には、デベロッパーやゼネコンなど延べ32社が意見を寄せ、参入に前向きな事業者もあったという。

他都市の事例と今後の課題

広域合併を経た他都市でも、市中心部の空洞化対策で試行錯誤が始まっている。2005年に12市町村が合併した浜松市では2025年、浜松駅周辺での賃貸オフィスビル建設に最大10億円を補助する制度を新設。自動車大手スズキが浜松駅南に新拠点を設け、常葉大学もキャンパスを中心部へ移転する。

富山市では「コンパクトシティー」を掲げ、2006年にLRT(次世代型路面電車)を導入し、空き店舗への出店や沿線住民を支援。中心部では2008年以降、転入者が転出者を上回った。

実は浜松市も浜松駅周辺への投資と並行して山間地でも移住・空き家対策を推進。富山市も分断されていた市街地と郊外を結ぶ路線を設けた。両市とも中心部と周辺部の相乗効果を狙う点で共通する。

「さまざまな地域を『点』ではなく『面』で捉えたい」。津市のコンサルタントで、中心部のホテル再生に携わる日下部卓也さん(40)は語る。県の「DXアドバイザー」も務める立場から、中心部と周辺部の一体的な再生にはリモートワークや人工知能(AI)などデジタル技術の活用が有効とみる。

合併特例債が終了し、限られた予算の中、いかに中心部と周辺部の一体的な開発ができるかが鍵になる。

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前葉市長は、旧一志町出身の前市長の方針を踏襲し「周辺部のまちづくりに力を入れてきた」と振り返る一方で、新たな一手の意義を語る。「ようやく中心部にスポットライトが当たるときが来た。津駅前から新しいまちづくりを進めていきたい」