和歌山城(和歌山市)の南西部に位置する「扇の芝」と呼ばれる区域で、芝生を張る作業が6月下旬から本格化する。城の成り立ちや防衛上の特徴を示す重要な場所だが、かつては商店が立ち並び、長らく芝生が失われていた。芝生が戻るのは実に127年ぶりとなる。和歌山市は、市民が参加できる芝張りイベントを20日に計画し、協力を呼びかけている。
「扇の芝」とは
市和歌山城整備企画課によると、扇の芝は県庁前交差点付近で扇のように広がった約3500平方メートルの区域。現在は更地となっており、城の石垣が折れ曲がったように配置された「屏風(びょうぶ)折れ」がはっきりと見えるようになっている。この屏風折れは、攻め込まれた際に城内から敵の側面を攻撃しやすくする防御構造として重要な役割を果たしていた。
扇の芝は城外への見通しを良くするためにあえて設けられた空き地であるとの見方もある。この区域はかつて砂地が広がり、堀を設けにくい防衛上の弱点だった。江戸時代初期、紀州徳川家の初代・徳川頼宣が入城した後に拡張されたとされる。当時は大坂夏の陣で豊臣家が滅亡した後であり、西国への備えとして周辺の城が再整備された時期にあたる。
127年の変遷
明治時代まで扇の芝には芝生が広がっていたとみられるが、1899年(明治32年)以降、宅地化が進み、商店などが建ち並ぶようになった。市は2016年度の史跡整備計画改訂で、「国史跡への追加指定を視野に入れ、かつての景観整備を目指す」ことを明記。住民との協議を経て国に働きかけ、2023年までに扇の芝一帯が国史跡「和歌山城」の一部として追加指定された。2025年度までに建物が撤去され、土地も公有化された。
市民参加の芝張りイベント
6月から始まる芝張りは、景観整備の大詰めとなる。2027年度の供用開始を目指し、一部は広場として市民に開放される予定だ。
イベント詳細
- 日時:6月20日 午前9時30分から約45分間
- 内容:区域の一部に芝生のシート(縦30センチ、横37センチ)を植える
- 募集人数:200人(応募多数の場合は抽選)
- 応募締切:6月14日午後5時
- 申し込み:専用フォーム(https://logoform.jp/form/fKMM/1613895)から
- 問い合わせ:市和歌山城整備企画課(073-435-1044)
10日の定例記者会見で尾花正啓市長は「市民にとって憩いの場になる。127年ぶりの歴史的なイベントに関わり、扇の芝に愛着を持っていただければ」と述べ、参加を呼びかけた。



