須磨浦カーレーター、還暦で再評価 「日本一乗り心地が悪い乗り物」がSNSでバズりV字回復
その名の通り、山あり谷ありの歴史を歩んできた――。神戸市須磨区の須磨浦山上遊園で、山頂までを往復する「須磨浦カーレーター」が運行開始から60年を迎えた。かつては利用客の落ち込みから廃止も検討されたが、近年ではそのレトロ感がSNSで「バズり」、「日本一乗り心地が悪い乗り物」という自虐的な売り文句も相まって利用者が急増。若者世代からインバウンド客までがこぞって訪れ、神戸の老舗遊園地が再び脚光を浴びている。
レトロな魅力がSNSで話題に
須磨浦カーレーターは1966年(昭和41年)3月18日に運行を開始。山陽電鉄須磨浦公園駅からロープウェーで山を登った先に乗り場があり、2人乗りのカゴのような車両に乗り込む。全長約91メートルの傾斜をガタゴトと登り、時折、激しい揺れに襲われながら約2分20秒で園内の山頂に到着する。同園を運営する山陽電鉄によると、全国でカーレーターを運行しているのはここだけ。利用客からは「まるでアトラクションみたいだ」と称賛され、親しみを込めて「日本一乗り心地が悪い乗り物」と呼ばれている。
しかし、多くの遊園地と同様に、須磨浦山上遊園も利用客の減少に悩まされてきた。ロープウェーの利用客は1969年度に約80万人いたが、1989年度には約30万人に減少。コロナ禍の2020年度にはピーク時の10分の1以下の約7万2000人まで落ち込み、以降2023年度までは10万~16万人の利用にとどまった。利用者の減少や設備維持の観点から、一時はカーレーターをエスカレーターに変えることを検討したこともあった。
昭和レトロブームでV字回復
「捨てる神あれば拾う神あり」という言葉通り、近年の昭和レトロブームが同園を再評価させた。Z世代を中心とした若者たちが牽引するこのブームにより、須磨浦山上遊園の魅力が再発見されたのだ。園内には、1周約55分で回る3階の喫茶店でクリームソーダを飲みながら景色を望める「回転展望閣」や、約3000枚のドーナツ盤(レコード)を聞けるジュークボックス、地上約3~8メートルの高さを自転車をこいで1周する「サイクルモノレール」、ブランコのような観光リフトなど、レトロなアトラクションが揃っている。
これらの魅力が若者世代に受け入れられ、台湾など海外からの観光客も多く訪れたことで、2025年度の利用客は約27万人と「V字回復」を果たしている。特にサイクルモノレールは昭和レトロ感が人気を集め、多くの来園者を引きつけている。
還暦を祝う特別装飾で賑わい
2026年3月18日には、カーレーターの還暦を祝って、期間限定の赤いちゃんちゃんこを装飾した2台が登場し、除幕式が行われた。来園者には記念品も配られ、多くの人が日本一悪い乗り心地を体感しようと列を作った。大阪府摂津市のパート従業員(49)は「ユーチューブで動画を見てすごい乗り物があることを知り、ぜひ乗ってみたかった」と笑顔で語った。
山陽電鉄の伊東正博社長は「山あり谷あり色々なことがあったが、これからも70年、80年、そして100年を迎えられるように頑張っていきたい。昔ながらのものでも素晴らしいものがあるとPRしていく」と胸を張った。須磨浦カーレーターは、その独特な魅力で新たな時代を切り開き、地域の観光資源としての価値を再確認させている。



