レトロな赤レンガ造りが人気を集める旧国鉄中央線の国登録文化財「愛岐トンネル群」。愛知、岐阜両県にまたがる廃線路の探索に春日井市の市民グループが乗り出してから今年で20年となる。やぶの中で40年間眠っていた遺構を“発見”したきっかけは十数キロ離れた同市のJR勝川駅前の街づくりだったと聞き、真相の掘り起こしに挑んだ。
赤レンガ保存活動から始まった探求
「初めは駅ホームの赤レンガを駅前の街づくりに生かせないかという活動。トンネルは巡り合わせなんですよ」。NPO法人「愛岐トンネル群保存再生委員会」理事長の村上真善さん(74)=名古屋市守山区=が、記憶をたどりながら話してくれた。
高架化事業で勝川駅が取り壊された2005年に話はさかのぼる。1900(明治33)年の中央線開通時からホームの土台として使われていた赤レンガも廃棄されることに。自身のオフィスを駅前に構え、駅前通商店街振興組合の専務理事を務めていた村上さんは「どこにでもある街にはしたくない」と考えていた。
「親しんだレンガを街の記憶として残したい」。村上さんらがJRや地元に働きかけた。活動を通して地元の高齢男性から「レンガのトンネルが市内のどこかに残っていると思う」と教えてもらった。地域情報紙の発行に携わっていた村上さんは「もし赤レンガのトンネルが残っていたら郷土の宝になる」と直感した。
探索の困難と発見
ただ場所ははっきりせず、市内の古老らも「聞いたことがない」と口をそろえた。JR東海は当初協力的ではなかったといい、2006年から自分の足で探索を開始。愛岐トンネル群14基(うち1基廃止)のうち、半年後にJRが管理する名古屋寄りの1、2号の存在を突き止めた。岐阜県多治見市の2基も確認したが、全容は謎に包まれたままだった。
07年6月2日にNPO法人の前身の委員会を設立し、本格的な解明に乗り出した。その2週間後、村上さんと谷口義幸さん(82)ら会員3人がJR定光寺駅近くの崖をよじ登り、生い茂るやぶをかき分けて3~6号を見つけた。駅に帰ってきた時には暑さでフラフラに。「駅の下のビワの実をもいで食べたら生き返った」と話す谷口さん。熱中症で10日間入院した。
保存活動の広がり
4基はその後、ナショナルトラスト運動の手法でNPO法人が取得し、春と秋に特別公開している。
ホームの赤レンガ保存活動は、勝川駅周辺まちづくり協議会による「赤レンガはぎ取り隊」として結実。07年9月、JRから提供されたブロックから市民ら約100人がドライバーや電気ドリルを使って取り出して持ち帰り、自宅の庭などに活用した。勝川小学校などではモニュメントに使われて今も地域を見守る。
トンネル群の価値を知ってもらう企画を打ち出す村上さんは「かっこよく言えば、勝川駅の赤レンガが自分の人生に最後の扉を開いてくれた。トンネルの保存活動へとつながり、自分の利益よりも地域に無償で奉仕することの楽しさを知った」と感謝する。(牧真一郎)
特別公開のお知らせ
愛岐トンネル群の春の特別公開が5月2~6日に行われる。開通当時の面影を残す赤レンガのトンネルと、青モミジの鮮やかな新緑が来場者を魅了する。
春日井市のNPO法人「愛岐トンネル群保存再生委員会」などが毎年春と秋、3~6号トンネルを含む同市玉野町の廃線跡(約1・7キロ)を公開している。
コンサートや「廃線印」販売、子ども向けのかぶとの無料試着コーナーのほか、先月発表した公式テーマソング「愛岐トンネルの詩(うた)」の披露もある。午前9時半~午後3時(入場は午後2時まで)。雨天中止。入場料100円(小学生以下無料)。付近に駐車場はない。(問)公開時の事務局=080(9492)5458



