名鉄百貨店が2月28日、最終営業日を迎え、71年にわたる歴史に幕を下ろしました。この日、名古屋市中村区の本館では、従業員たちが最後の朝礼に臨み、長年の歩みを振り返る感動的な瞬間が繰り広げられました。
従業員の思いと客との絆
午前9時半過ぎ、本館1階の売り場で行われた朝礼では、本店長の犬塚篤史さん(55)が従業員に向けて語りかけました。「名鉄百貨店は71年の年月、お客様の節目に寄り添ってきた。みなさまの誠実な仕事の集積が歴史そのものを作った」という言葉に、従業員らは熱心に耳を傾け、深く共感していました。
勤務歴約13年の小川智香さん(39)は、本館1階の婦人雑貨売り場を担当してきました。彼女は、年配の常連客からかけられた「夏は傘、冬に手袋をあなたに選んでもらったのよ」という言葉を今でも忘れられないと語ります。犬塚本店長の話を聞き、閉店の実感が湧いてきた小川さんは、「寂しいです」と心情を明かしました。
客からの感謝のメッセージ
午前10時の開店後、メンズ館6階の連絡通路では、3万枚を超えるメッセージカードが壁を埋め尽くしていました。その中には、「私と同じ1954年」と記されたカードもあり、開業年に生まれた71歳の客の思いが込められていました。さらに、父親に連れられて80円均一の会場を訪れた思い出など、一人一人の心温まるエピソードがつづられていました。
他のカードには、「物産展が楽しみでした」「65年くらい前に買ってもらったあんパンが最高だった」など、名鉄百貨店との長い関わりを偲ぶメッセージが多数寄せられ、客との深い絆が浮き彫りになりました。
百貨店業界の現状と閉店後の展望
近年、百貨店はショッピングセンター、衣料専門店、ネット通販などとの競争で劣勢が続き、全国的に閉店が相次いでいます。名鉄百貨店も例外ではなく、営業終了時間の午後7時過ぎには、正面玄関前に別れを告げるファンらが集まり、惜別の思いに包まれました。
名鉄百貨店は、名駅周辺の再開発計画の対象となっており、解体後の新たな商業施設も計画されていました。しかし、現在はその計画が未定となり、百貨店跡地の行方は不透明なままです。名鉄百貨店社長の石川仁志さん(64)は、「本心としては、なるべく早く再開発のスケジュールが組み直され、新しい商業施設ができてほしい」と願いを込めて語り、地域の未来への期待を示しました。
71年の歴史を刻んだ名鉄百貨店の閉店は、単なる商業施設の終焉ではなく、多くの人々の思い出と地域の節目を象徴する出来事となりました。従業員と客の絆が紡いだ物語は、今後も名古屋の街の記憶として受け継がれていくことでしょう。



