マドモアゼル・ユリアが語る「着物」の新たな魅力:クリエイティブな表現としての和装
マドモアゼル・ユリアが語る着物の新たな魅力

マドモアゼル・ユリアが描く「着物」の新たな世界観

DJ、シンガー、モデルとして10代から活躍し、近年は着物スタイリストとしても注目を集めるマドモアゼル・ユリアが、著書「きもののとりこ」(世界文化社、税込み2970円)を先ごろ出版しました。同書は発売から1か月で重版が決定し、着物関連書籍としては異例の売れ行きを記録しています。音楽やファッションの現場で培った審美眼を生かし、現代的な感覚で着物の魅力を発信するユリアに、洋服とは異なる「クリエイティブな表現」としての着物について聞きました。

海外の視点から学んだ着物の可能性

2月中旬のインタビューで、東京・日本橋に現れたユリアは、「東海道五十三次」をテーマにした着物をまとっていました。江戸時代に五街道の起点だったこの地に合わせ、旅の情景が描かれた一着です。「会う人や行く場所、季節によって着物の選び方は変わります」とユリアは語ります。ふだん着物に馴染みの薄い人々は、成人式や結婚式など「格」を重視するシーンで着ることが多く、季節を問わない汎用性の高い柄を選びがちですが、ユリアは「それだけでは着物の本当の面白さに気づきにくい」と指摘します。

「今日着ている東海道五十三次の柄を見ると、旅に出たい気持ちになり、冬から春へ移り変わる今の時期にぴったりだと感じます。場所を意識して着物を選ぶことは、気分を高める要素になります」と説明します。また、ラジオ番組「松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD」にゲスト出演した際には、松任谷由実の楽曲「雪月花」に合わせてコーディネートしたそうです。「ユーミンさんの曲は季節を反映するものが多く、『さすが呉服屋さんのお嬢さんだな』と思いました。雪月花という言葉は中国の漢詩が由来で、『雪や月や花を見た時に、その人のことを思い出す』と使われています。私が着物のスタイリングでストーリーを作るのに似ていると感じ、この曲を選びました」と振り返ります。

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着物への興味は海外での体験から

着物スタイリストとして活動し、着物教室も主催するユリアですが、もともと着物に強い興味があったわけではありません。母親が着付けの仕事をしていましたが、イギリスのカルチャーに影響を受けて育ち、高校生時代にはパンクバンドを結成。10代の頃は「エッジの効いた洋服」に夢中だったといいます。転機となったのは、DJとして頻繁に訪れた海外での体験でした。パリやロンドンで、好きなデザイナーが着物からインスピレーションを得ている姿を目の当たりにしたのです。

「彼らが見ている『KIMONO』は、私がそれまで見てきた着物とは全く別の視点から見たものでした。彼らのクリエイションにおいて、着物の文様の抽出の仕方がとてもおもしろかったんです」とユリアは語ります。この経験が、着物を新たな表現手段として捉えるきっかけとなりました。

着物の「不変性」と「自由度」が生む創造性

ユリアは、着物の最大の魅力を「不変性」と「自由度」だと強調します。洋服はシーズンごとにシルエットが変わり、トレンドが移り変わりますが、着物は約400年間、形がほとんど変化していません。いつの時代も、誰が着ても基本の形は同じで、メンテナンスさえすれば何十年たっても色あせることがありません。だからこそ、着物のスタイリングは、着る自分自身がデザイナーになれる作業だと信じています。

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「洋服を着ることは、デザイナーが作った世界観を身にまとうこと。でも着物は、自分でその世界観を作り上げなければなりません。着物に帯をどう合わせるか、帯揚げや帯締めの色をどうするかなど、難しいかもしれないけど、めちゃくちゃ楽しいんです」と語ります。別の場所で見つけてきた着物と帯、小物などを、自分の感性で一つの世界観にまとめ上げるプロセスこそが、着物の醍醐味だとユリアは強調します。

「着物警察」への挑戦と著書のメッセージ

一方、自分でコーディネートした着物姿で街を歩いたり、SNSに投稿したりすると、「着物警察」と呼ばれる人々から「間違い」を指摘されたり、帯や襟を直されたりすることがあります。「自分が着物について詳しいことを聞いてほしい人たちなのだろうと想像します。洋服だったら言わないのに、なんで着物だったら言うのかなと不思議です。私の教室の生徒さんや私自身も、着物を着始めた時には、怖くてとてもおびえていました。だから私は、『何も言われないくらい、こちらの方がさらに詳しくなってやる!』と思っていました(笑)」とユリアは語ります。

著書「きもののとりこ」は、ユリアの着物コレクションを軸に、季節に応じた色柄選びやコーディネート、小物使い、ヘアスタイルまで具体的に解説しています。アンティークから現代作品まで幅広い着物を取り上げながら、装いに宿る「物語」を組み合わせる楽しさを伝えています。さらに、東京や京都のおすすめスポットを紹介し、「着物を特別なものではなく、日常のワードローブとして捉えてほしい」との思いが詰まった一冊です。

「自分」というデザイナーの手で、一着のストーリーを完成させる。そんな着物の楽しみ方を知れば、日常はもっと彩り豊かで、クリエイティブなものになるに違いありません。