松渓経塚の遺物14点が里帰り 愛媛県歴史文化博物館で特別展「伊予の経塚名品展」開幕
松渓経塚遺物14点が里帰り 愛媛県歴博で特別展開催 (13.02.2026)

松渓経塚の貴重な遺物14点が愛媛に里帰り 特別展で公開

奈良国立博物館(奈良市)が所蔵する松渓経塚(西予市野村町)などの出土品14点が、愛媛県に「里帰り」を果たした。14日から西予市宇和町の愛媛県歴史文化博物館で開幕する特別展「伊予の経塚名品展」で公開される。中世の経塚信仰を伝える貴重な史料であり、国立文化財機構文化財活用センター(東京)が実施する所蔵品貸与促進事業を活用して実現した。

平安時代の末法思想が生んだ経塚信仰

平安時代から仏教の教えが廃れ、世の中が乱れるという末法思想が広がった。不安にかられた人々は未来に経典を残し、極楽往生や親族の供養を願って盛んに経塚を造営した。平安時代の貴族、藤原道長も1007年に奈良・吉野の金峯山詣でを行い、直筆の写経を埋納している。愛媛県内では約15か所の埋納経塚が見つかっており、経塚信仰が都や九州から四国に広がったことを示している。

松渓経塚出土品が初の里帰り

松渓経塚の出土品は今回が初めての里帰りとなる。1957年に発見された鎌倉時代の遺跡で、地元の史談会が遺跡調査を実施する前に、当時の自然な流れで奈良国立博物館の管理物となった。展示されるのは以下の貴重な品々だ。

  • 徳治3年(1308年)の銘がある銅製経筒(高さ15.7センチ)
  • 経筒の中にあった法華経の一部
  • 宋銭6点

法華経は保存状態が極めて良く、文字が断片的に読める状態を保っている。

石手寺経塚と大日堂経塚の出土品も展示

石手寺経塚(松山市)の出土品も里帰りを果たしている。経塚は寺の裏山にあったとされ、経筒は現存しないが、中国・南宋時代(12世紀)の四耳壺(高さ25センチ)が展示される。肩部に四つの耳があり、表面は青みがかった釉薬で覆われる。お経を入れる容器に転用されたとみられ、輸入品を入手できる有力者がいたことや、当時の陶磁器文化をうかがい知ることができる。香などを入れたらしい円形容器の合子、小壺も並ぶ。

大日堂経塚(松山市)で出土した12~13世紀にお経が刻まれた石「刻字一石経」も一時帰還品として展示される。

県歴博所蔵の堂ヶ谷経塚経筒が初公開

里帰り品以外では、愛媛県歴史文化博物館が所蔵する堂ヶ谷経塚(伊予市)の経筒(高さ30センチ)が初公開される。県内最古で久安6年(1150年)の銘があり、歴史的価値が高い。

学芸員「タイムカプセルに近い行為」

三浦彩学芸員は「お経を埋めるという行為は今のタイムカプセルに近い。経筒は薄い金属でできており、その技術のすごさや、埋めるために書いたお経の様子にも注目してほしい」と語っている。

文化財貸与促進事業の意義

所蔵品貸与促進事業は、地方創生や観光振興を目的に、四つの国立博物館や二つの文化財研究所の文化財を貸し出す制度。愛媛県歴史文化博物館は昨年、事業に初めて申請し、認められた。2025年度の貸与は同館を含めて全国8か所。借用料や輸送費、保険料の負担がないため、地方の博物館にとっては、限られた予算で貴重な文化財を借りられる大きなメリットがある。

「伊予の経塚名品展」は4月5日まで開催。常設展との共通観覧券は、高校生以上800円、65歳以上500円、中学生以下350円。