スモーキングルーム第142回:金ボタンと文士の対話、祖国の独立を巡る緊迫した議論
スモーキングルーム第142回:金ボタンと文士の祖国独立議論

スモーキングルーム第142回:カフェハウスで交わされる祖国の命運を巡る緊迫した対話

千早茜氏による連載小説「スモーキングルーム」の第142回が公開された。物語は、金ボタンと親しくしていた劇作家や俳優たちの数が減っている状況から始まる。いつも座の中心にいて、酒場やカフェハウスで朗読をしていた文士が、彼らの内の数名が亡命したことを語る場面から幕を開ける。

言論の自由を巡る文士の痛烈な批判

文士は足を組み、カフェハウスの一角に置かれた新聞の束から過激な文言が並ぶ一紙を引き抜いた。その新聞は反Jを主張し、民族の純血を謳う内容だった。文士はこれを指して、「こんな新聞が刷られているんだ。これが言論の自由だって、笑わせる」と切り出す。さらに、「言論の自由は排除することじゃない、思想の違う人とも語り合うことだ」と強調し、現在の言論状況に痛烈な批判を投げかける。

この文士は、金ボタンに二日酔いの憂鬱を教えてくれ、最も親身に話を聞いてくれた人物だった。金ボタンは父親との確執も彼にだけは話していた。そして、彼はJ国の出身者であった。

祖国独立を巡る緊迫した議論

文士は金ボタンに向かって、「今回の件に関しては君の父親は正しい」と告げる。政府が国民投票を考えているらしい隣国との合併問題について、「今は団結して祖国を守るべき時だ」と主張する。反対して独立を支持するよう促すその言葉には、祖国への深い愛着がにじみ出ていた。

しかし、金ボタンは口をひらき、「俺の働くホテルは政治的な立場を明確に示さない方針なんだ」と応じる。これに対し、文士は「資本主義の塊というわけか」と首を振り、現状を憂う。

隣国の計画的な動きと警告

文士はさらに緊迫した口調で続ける。「しかし、もうそんなことを言っている局面じゃない。この国は乗っ取られるぞ」と警告を発する。隣国が非常に計画的に事を運ぼうとしており、報道記者たちを裏で潰しにかかっていると指摘。市民の示威運動はもう相手にしていない状況を説明する。

「いいか、強大な統一国家なんてまやかしの言葉に惑わされるな。隣国の全体主義に吞み込まれるだけだ」と文士は訴えかける。「この国の伝統も美も泡のように消える。祖国を愛する個人として投票に行け」と強く促すのであった。

金ボタンの内面に去来する煙の存在

金ボタンは「わかった」と呟きながら、煙のことを考えていた。身分証を持たない煙は投票にも行けないという現実が、彼の心に重くのしかかる。この場面は、物語の重要な伏線となっている。

今回のエピソードでは、以下の重要な要素が浮き彫りにされている:

  • 亡命した劇作家や俳優たちの存在
  • 過激な内容の新聞と言論の自由を巡る議論
  • 隣国との合併問題と国民投票の可能性
  • ホテルの政治的立場を巡る金ボタンの葛藤
  • 文士による隣国の全体主義への警告
  • 身分証を持たない煙の存在とその暗示

千早茜氏の筆致は、緊迫した政治状況の中での個人の葛藤を繊細に描き出している。カフェハウスという日常的な空間で交わされる会話を通じて、祖国の命運を巡る重いテーマが浮かび上がる構成は見事である。読者は、金ボタンと文士の関係性、そして煙という存在の意味に思いを馳せずにはいられない。