戦後沖縄の記憶を伝える写真展が名古屋で開催
沖縄・伊江島において、米軍による土地の強制接収に対して非暴力で抵抗し続けた反戦地主の阿波根昌鴻(あはごんしょうこう)氏(1901~2002年)が撮影した貴重な記録写真の展示会が、2026年3月11日から15日までの期間、名古屋市東区にある市民ギャラリー矢田で開催されることが決定しました。
「沖縄のガンジー」と呼ばれた阿波根昌鴻の軌跡
阿波根昌鴻氏は、太平洋戦争末期の沖縄戦において一人息子を失い、さらに1955年には自宅を破壊され土地を接収されるという過酷な経験をしました。その直後から、島民たちが受けた被害の証拠を後世に残すことを決意し、二眼レフカメラを手に撮影活動を開始したと伝えられています。
沖縄本島の北部に位置する伊江島は、沖縄戦で約1500人の島民が命を落とした悲劇の地です。戦後、米軍統治下の沖縄各地では住民の土地が強制的に接収される事態が発生し、伊江島でも「銃剣とブルドーザー」と表現されるような激しい接収作業が進められました。
写真が語る戦後沖縄の現実
阿波根氏は、撮影そのものを抵抗の手段として位置づけ、破壊された家屋やテント生活を余儀なくされた人々の姿を克明に記録しました。また、抗議活動の一環として行われた「乞食行進」の様子もフィルムに収めています。
これらの写真は、単なる記録を超えて、土地を奪われた人々の苦悩と、それに対する静かながらも力強い抵抗の歴史を現代に伝える重要な資料となっています。展示会の準備を担当する阪井芳貴・名古屋市立大学名誉教授は、これらの作品が持つ歴史的価値と平和へのメッセージに深い敬意を表しています。
名古屋での展示会の意義
今回の写真展は、沖縄以外の地域において、戦後沖縄が経験した複雑な歴史と土地問題について考える貴重な機会を提供します。展示される写真は、伊江島の日常風景や土地闘争の記録を通じて、訪れる人々に沖縄の戦後史を具体的にイメージさせる力を持っています。
阿波根昌鴻氏が残した視覚的記録は、沖縄戦の記憶が風化しつつある現代において、過去の事実を直視し、平和の尊さを再確認するための重要な役割を果たすでしょう。名古屋市民をはじめ多くの来場者が、これらの写真を通じて沖縄の歴史と向き合うことが期待されます。
