小野町・東堂山満福寺に並ぶ個性豊かな羅漢像522体、全国から奉納が集まる
福島県小野町の市街地から北西に位置する東堂山満福寺には、個性豊かな羅漢像522体が並んでいる。スイカにかぶりつく像や、向かい合って碁を打つ像、夫婦で酒をつぎ合う像など、笑顔でコミカルな表情の「羅漢様」が多く、町内外から参拝客が訪れている。
歴史ある寺の荘厳な雰囲気と変わり種の羅漢像
山道を抜けて駐車場に着くと、「東堂山へようこそ」の看板とともに数体の羅漢像が見えてくる。参道に立ち並ぶ羅漢像を眺めつつ、仁王門をくぐると、大岩の上にそびえる鐘楼が目に飛び込む。この鐘楼は江戸時代の1861年に建てられ、小野町重要文化財に指定されている歴史ある建物だ。同時代に植えられたとされるスギの巨木に囲まれ、境内は荘厳な雰囲気に包まれている。
観音堂を過ぎて羅漢場に入ると、羅漢像が山沿いに集まっている。昭和の名曲「上を向いて歩こう」を手がけた作詞家の永六輔、作曲家の中村八大、歌手の坂本九の「六八九トリオ」を題材にした像や、磐越道の開通を記念したヘルメット姿の像などの変わり種もあり、眺めているとたちまち時間が過ぎる。
平安時代に遡る寺の歴史と信仰の厚さ
東堂山の歴史は平安時代初期にさかのぼる。町史によると、蝦夷征伐で訪れた征夷大将軍の坂上田村麻呂が東堂山で菩薩の加護を受け、討伐を果たした。戦没者や軍馬の霊を供養しようと、807年に奈良の高僧である徳一大師によって満福寺が開山されたと伝わる。馬をはじめとした家畜の健康と多産、必勝祈願にご利益があるといわれ、馬を連れて参拝できるように石段は横幅が広く作られている。
中通りと浜通りを結ぶ交通の要衝にある寺にはこれまで、東北や北関東から多くの参拝客が訪れてきた。明治から大正にかけての寺に続く街道のにぎわいは「アリの行列」と称されるほど。寺を管理する専光寺(同町)の住職である時田敏孝さん(80)は「祭りの時には1日でお札が4万3000枚も出るほど信仰を集めていた」と話す。
昭和60年に始まった「昭和羅漢」プロジェクト
羅漢像を設置する動きは1985年(昭和60年)に始まった。「昭和の還暦」を迎え、町に新たな名所を作る機運が高まり、「昭和羅漢」と題したプロジェクトが始動。町が羅漢像の奉納を呼びかけると、檀家や住民が賛同した。数が増えると新聞やテレビで話題となり、全国から奉納を希望する声が相次いで、像はどんどん増えていった。
像の多くは依頼を受けた地元の業者が制作した。水野石材店(同町)代表の水野勝己さん(49)によると、同店は祖父の三郎さん(故人)の代から全体の約8割を手がけたという。水野さんは「『晩酌が好きなんだ』『魚釣りが趣味だ』と話を聞き、その人らしい像を作ってきた」と振り返る。
祭り復活や日本酒販売で新たな盛り上がり
東堂山を盛り上げる取り組みも活発だ。町内では町産の酒米を使った日本酒「東堂山勝馬」が販売されている。5月3日には新型コロナウイルス禍で自粛していた例大祭が7年ぶりに復活し、お札やお守りを販売して観音堂のご開帳も行う。「祭りを復活させてほしいとの要望が強かった。少しずつ元の姿に戻したい」と時田さんは語る。町民のシンボルとして愛されてきた寺は令和の今、新たな盛り上がりを見せそうだ。
住所:小野町小戸神字日向128
交通手段:JR小野新町駅から車で約15分
拝観:年中無休、拝観無料
問い合わせ先:小野町役場産業振興課(電話0247・72・6938)
拠点の小野新町駅と周辺施設
JR小野新町駅は1915年3月に開業した。磐越東線の拠点駅で、郡山方面からの列車の多くは、この駅で折り返す。駅内には写真18枚が飾られ、111年の歴史を振り返っている。
駅近くにある東方文化堂は観覧無料のギャラリーを構え、磐越東線の歴史や看板、写真などを紹介している。問い合わせは同施設(電話090・7933・7805)へ。



