港区の新複合ミュージアム「MoN Takanawa」が開館 ぐるぐる展で循環の美を探る
近年の大規模都市開発において、「アート」や「文化」は必須要素として位置づけられてきた。しかし、その在り方には変化の兆しが見え始めている。従来は建築設計と並行して、一貫したテーマに沿って現代美術作品を空間に配置する手法が主流だった。だが、都市環境が刻々と移り変わる現代では、恒久的な作品展示だけでは時流に追いつけない。そこで、状況の変化に柔軟に対応できる可変性が重要視されるようになり、モニュメンタルな永続性から、華やかなイベント性へと重心がシフトしている。
TAKANAWA GATEWAY CITY内に誕生した「物語を育む博物館」
JR東日本が展開する巨大都市開発「TAKANAWA GATEWAY CITY」に、3月28日にオープンした複合型ミュージアム「MoN Takanawa:The Museum of Narratives」は、こうした都市型文化施設の典型例といえる。名称は「物語を育む博物館」を意味し、地上6階、地下3階の建築には、大小二つの展示スペースと劇場を備える。さらに、約100畳の畳敷きスペースや複数のショップ、カフェ、レストランが設置され、テラスには足湯も用意されている。ミュージアムというより、都心の複合観光施設としての性格が強い。特に象徴的なモニュメントや装飾はないが、螺旋状の建築自体がシンボリックな存在だ。螺旋は、この世の物事が絶えず循環しながら成長し、進化していく様子を表す人類の文化的象徴であり、希望の形態と解釈される。
開館記念展「ぐるぐる展」が提示する循環の世界
この螺旋の概念を具体化するのが、開館記念第1弾となる「ぐるぐる展─進化しつづける人類の物語」だ。メディア・アートによる回転の美を皮切りに、山手線、回転ずし、経済循環、伝統文化、民俗行事の継承、人間の体内の循環、そして1日の生活慣習など、多様な循環がテーマとして取り上げられる。この世が絶え間なくぐるぐると循環しながら展開してきた状況が、体験型装置も交えて、家族向けの教養・教育的に構成されている。親しみやすい展示ではあるが、今日的都市文化の展望という観点からは、実に甘く楽天的過ぎる感が否めない。
美術評論家の藤田一人氏は、この展示に対して疑問を投げかける。今日の世界情勢から「ぐるぐる」に因む言葉を思い浮かべると、「因果応報」「諸行無常」「憎しみの連鎖」などが挙がる。確かに螺旋は循環しながら上昇していくが、人間の文化や社会は果たしてそうなっているのだろうか。延々と歴史的問題が繰り返されているだけではないか。科学技術や合理的思考が発展し、物質的欲求が拡大する中で、精神的不安は増し、色濃くなるばかりだ。
都市開発に潜む楽観論と終焉への視点
藤田氏は、昨今の華麗な都市開発にも同様の傾向を感じるという。そこには日本の経済的発展が永遠に続くという楽観論が満ちているようだが、それは果たして可能なのか。懐疑はないのか。少なくとも、今日は戦後日本の衰退、いや終焉期を迎えている。そんな中で、かつての高度経済成長を夢見るよりも、ゆったりと充実した精神的成熟とともに、安らかな一時代の終焉を目指すのも一つの選択肢ではないか。勿論、それで終わりではなく、そこから新たな時代が始まるのだ。
こうした「ぐるぐる」の文化観こそ、今日の日本に求められるものだと藤田氏は指摘する。恒久的な展示からイベント性重視へと移行する文化施設の潮流は、一時的な華やかさを追求するが、深い精神的成熟を軽視している可能性がある。MoN Takanawaの「ぐるぐる展」は、循環の美を楽天的に提示する一方で、現代社会が抱える課題を浮き彫りにしている。
「ぐるぐる展」は、東京都港区三田3の16の1(TAKANAWA GATEWAY CITY内)のMoN Takanawaで、9月23日まで開催中。問い合わせは電話0570・022・030へ。



