東京国立近代美術館で初公開 メダルド・ロッソ「Ecce Puer」と橋本平八「幼児表情」の神秘的な対比
ロッソ「Ecce Puer」初公開 東京国立近代美術館で神秘的な彫刻展

光と影が織りなす神秘的な少年像 東京国立近代美術館で初公開

東京・千代田区の東京国立近代美術館で、イタリアの彫刻家メダルド・ロッソ(1858-1928年)の後期最高傑作の一つ「Ecce Puer(この少年を見よ)」が新たに収蔵され、初めて一般公開されている。同時に、日本の彫刻家・橋本平八(1897-1935年)による「幼児表情」も展示され、子どもの像をテーマにした興味深い対比を生み出している。

「彫刻の印象派」が追求した一瞬の光

ロッソの作品は、1920年から25年頃に制作されたワックスと石膏による彫刻で、高さ47センチ、幅34センチ、奥行き32センチ。金色の頭部が柔らかな光を放ち、薄布を張り付けたように目鼻立ちがうっすらと浮かび上がる。近づくとぼんやりし、遠ざかるとはっきり見えるという不思議な視覚効果を持つ。

モデルは6歳の男の子で、英国の富豪からの依頼で制作された。着想については二つの説がある。一つは、ロッソが邸宅を訪れた際、窓辺のカーテンが光に透け、向こう側に隠れた少年の顔がふわっと浮かび上がった瞬間。もう一つは、降り注ぐ太陽の光を浴びる少年を見たという説だ。同館の三輪健仁美術課長は「いずれにせよ、瞬時に消えたイメージを形にしたのでしょう」と語る。

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ロッソ独自の技法と哲学

ロッソは自らを「彫刻の印象派」と称し、移ろう光を捉えようとした。その技術の核心は、彫刻の表面に用いた蠟(ろう)にある。半透明の蠟が光をはらみ、物質の輪郭をおぼろげにする効果を生み出している。

さらに驚くべきは、作品の横に回ると顔の正面しか作られておらず、裏側は泥の塊のようになっている点だ。三輪課長は「ロッソは定位置から鑑賞するよう求めていた」と説明する。三次元の彫刻でありながら、絵画のような二次元的な鑑賞を意図していた可能性がある。

作品の題名「エッケ・プエル」はラテン語で、新約聖書の「エッケ・ホモ」(この人=キリスト=を見よ)を連想させる。三輪課長は「宗教性は特にないと思うが、神々しさというのか、めったに感じられないオーラがあった」と初めて作品を見た時の印象を振り返る。

鑑賞者が体験する内省の瞬間

ロッソ自身はこの作品を「ありふれた世界における純粋さのヴィジョン」と述べている。三輪課長は「作品をずっと見ていると、ある瞬間、自分の内側に入ってくるような気持ちになる」と解説する。

実際に作品を前にすると、幼少期の記憶がよみがえる体験をする人も少なくない。夕暮れの公園で一人遊んでいたときの孤独感や、広大な宇宙に自分だけが浮かんでいるような感覚――そうした存在や死について初めて考えた瞬間が、この作品を通じて蘇ってくるのだ。

橋本平八「幼児表情」との対比

同じ会場では、橋本平八の「幼児表情」(1931年、木、高さ66.2センチ)も展示されている。橋本自身の言葉によれば「1歳前後の幼児の野獣性と人間性との交叉」を表現した作品で、下唇を突き出す様子が愛らしい。

ロッソの神秘的な光の作品と、橋本の木彫りによる素朴で力強い表現は、子どもの像という共通テーマながら、全く異なるアプローチを見せている。この対比が展示の見どころの一つとなっている。

展示の詳細情報

「Ecce Puer(この少年を見よ)」と「幼児表情」は、東京都千代田区北の丸公園3の1、東京国立近代美術館所蔵品ギャラリー(2階)で5月10日まで展示されている。初公開を記念し、ロッソ作品から引き出されるテーマを軸に所蔵作品を展示する特別企画となっている。

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開館時間は午前10時から午後5時まで(金曜・土曜は午後8時まで)。月曜日は休館(ただし5月4日は開館)。入館料は一般500円、大学生250円。高校生以下と18歳未満、65歳以上は無料で入場できる。

この展示は、近代彫刻の新たな可能性を探求したロッソの芸術と、日本の木彫り伝統を継承する橋本の作品が交差する貴重な機会となっている。光と物質、瞬間と永遠をめぐる深い芸術的対話を体験できる展覧会だ。