竜王戦1組で木村一基九段と稲葉陽八段が激突、受け師の決め手が焦点に
第39期竜王戦1組の対局で、木村一基九段と稲葉陽八段が盤上で火花を散らした。木村九段は、稲葉八段の粘り強い棋風を警戒し、必勝態勢でも油断しない姿勢で臨んだ。決め手となったのは、攻め駒にアタックする△5三金など、受け師としての確かな手筋だった。
対局前の緊張と自然体のたたずまい
将棋会館の玄関には、クチナシの実をかたどった特注のベンチが置かれている。この日、稲葉八段はそのベンチに腰掛け、勝負前の緊張感漂う中でも自然体を保っていた。一方、木村九段は定刻30分ほど前に特別対局室に入室。上座に向かう途中、控えめに挨拶を交わす律義な一面を見せた。
振り駒では木村九段の振り歩先でと金が3枚出て、先手番が稲葉八段に決まる。木村九段の口元が真一文字に結ばれたのは、先手を欲した心情の表れかもしれない。稲葉八段は表情を変えず、盤の中央を静かに見つめていた。
相掛かりの駆け引きとAI時代の実感
対局は両者得意の相掛かりに進み、序盤から激しい駆け引きが展開された。第1譜では後手の木村九段が飛車先の歩を交換し、浮いた4六の歩をどう処理するかが焦点となった。第2譜では、木村九段が▲4七銀と守りを固めるなど、細かい手順で優位を築いていく。
木村九段は、相掛かりの自由度の高さについて語り、「AI研究で貼り付けただけの記憶より、対局時の実感が役立つことも多い」と指摘。特に、羽生善治九段との過去の対局を思い出し、△3四歩を突かない指し方に工夫を凝らした。
将棋と競馬の意外な共通点
対局の合間には、木村九段と競馬の森一誠調教師との対談が紹介された。森調教師は、木村九段が7回目の挑戦で初タイトルを獲得した姿に勇気づけられ、自身も7度目の受験で調教師試験に合格。2025年にはエンブロイダリー号で牝馬二冠を達成するなど、将棋と競馬の世界には優勝劣敗の共通点が多いことが強調された。
木村九段はAIに関する所見も披露し、現代将棋における技術の影響について深く考察。対局中も、積極的な▲4五銀などの手で攻勢をかけ、稲葉八段の粘りに対応した。
記録係に声をかける稲葉八段の姿は、緊張感の中にも穏やかさを感じさせた。竜王戦の最新ニュースや観戦記は、読売新聞オンラインで随時更新されている。



