事前復興計画の課題 東北の教訓を生かすも空き地問題に直面する高知県宿毛市
事前復興計画の課題 東北の教訓生かすも空き地問題に直面

復興後の街に空き地が目立つ現実 東北の教訓を生かした事前計画の模索

2026年3月10日、東日本大震災の被災地では復興に長い時間を要し、人口流出が止まらない深刻な状況が続いています。この経験から、災害前に復興の姿を考えておくことの重要性が認識され、全国各地で事前復興計画を策定する動きが活発化しています。

南海トラフ巨大地震に備える高知県宿毛市の取り組み

高知県の西端に位置する港町・宿毛市では、南海トラフ巨大地震が発生した場合、最大25メートルの津波が想定されています。市はこの脅威に備え、3年がかりで「事前復興まちづくり計画」を策定しました。この計画は150ページを超える大冊で、住民との協働によって作成されました。

計画では、被災により沿岸部に住めなくなった場合の仮設住宅の設置場所や、高台への新たな住宅・店舗の集約エリアが詳細に記載されています。被災後はこの計画に基づいて復興事業を迅速に進めることが目指されています。

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住民の希望と現実の狭間で生じた課題

計画策定の過程では、2千人を超える市民を対象にアンケートを実施しました。その結果、大多数の住民が住み慣れた集落に近い高台に住み続けたいと希望していることが明らかになりました。しかし、高台の平坦な土地は限られており、全員の希望を叶えることは現実的に困難であることが判明しました。

2024年に開催された住民対象のワークショップでは、市側が東日本大震災の被災地で復興事業後に高台に移転した住宅街の写真を提示しました。この写真には、完成まで待てなかったり不便さを感じたりした多くの住民が地域を離れ、空き地が目立つ状況が写し出されていました。

防災士の小松由佳さん(49)は「衝撃だった」と振り返ります。 「説明を聞き、島から離れた高台への移住を受け入れるほかないと実感しました」と語りました。

住民参加のワークショップと合意形成の難しさ

計画策定のために開催された全6回のワークショップでは、回を追うごとに参加者が減少する傾向が見られました。このため、住民全体の「合意」を得たとは言い難い状況が生じています。それでも、地元の区長であり計画策定委員を務める中脇南海男さん(71)は次のように評価しています。

「住民が、ざっくりとした方向性を頭に入れておく意義は確かにありました。復興の基本的な枠組みを事前に理解しておくことは重要です」

急速な人口減少と計画の柔軟性

宿毛市では人口減少が急速に進んでおり、10年後には現在の6割まで人口が減少すると予想される地域もあります。市の担当者は次のように指摘します。

「細かく計画を決めても、前提条件が変化すれば計画通りに進まない可能性があります。この計画はあくまで現時点におけるまちの『未来予想図』の選択肢を示した段階に過ぎません」

計画では、沿岸西部地域において2カ所の高台に宅地を造成し、現在17地区に分散している集落を集約していく方向性が示されています。しかし、土地確保の現実性については疑問符が付く部分も残っています。

東北の教訓を未来に生かすための継続的な取り組み

事前復興計画の策定は、災害に強いまちづくりを実現するための重要な第一歩です。しかし、住民の希望と現実の制約、人口減少という構造的な課題をどのように調整していくかが今後の焦点となります。

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宿毛市の事例は、単に計画を作成するだけでなく、持続可能な復興の在り方を地域全体で考え続ける必要性を浮き彫りにしています。東日本大震災の教訓を生かしつつ、各地域の実情に合わせた柔軟な対応が求められています。