高知県土佐清水市、34.5メートルの津波想定で住宅高台移転へ事前復興計画を策定
東日本大震災から15年を迎えた今、南海トラフ地震による甚大な津波被害が懸念される中、高知県土佐清水市が新たな対策に乗り出している。同市は昨年秋に公表された県の津波想定で、最大34.5メートルの高さが予測され、県内で最も高い数値となった。この危機に対応するため、住宅の高台移転などを含む事前復興まちづくり計画の住民協議を新年度から開始し、2027年度末までの作成を目指す。
事前復興計画の詳細と対象地域
同計画は、市中心部の清水地区、足摺岬などの半島地域、市北部の下ノ加江や竜串を含む三崎地区、西部の下川口地区など、沿岸5地区を対象としている。これらの地域はいずれも津波による浸水が想定されており、対策として内陸の高台への住宅移転、土地のかさ上げ、堤防の整備などが素案として挙がっている。市のまちづくり対策課は「被災後の速やかな復興に向けて、広く住民の意見を求めたい」と強調している。
既存の対策と残る課題
土佐清水市ではこれまでに、228か所の高台を1次避難場所に指定し、96本の避難道を整備してきた。また、保育園や消防署、中学校、高校などの公共施設は高台への移転を完了している。避難所としては小中学校の体育館やコミュニティーセンターなど22か所を確保し、5,437人を収容する計画を立てている。
しかし、課題も多い。避難環境の改善を図る「スフィア基準」を適用すると、1人あたりの居住スペースが現在の2平方メートルから3.5平方メートルに拡大され、収容人数はさらに減少する。さらに、高齢化率は52.4%と高く、避難行動要配慮者は192人に上る。このため、市による「公助」だけでなく、住民同士の「共助」が不可欠となっている。
橋本市長の取り組みと国道321号の重要性
2026年1月に就任した橋本敏男市長は、被災後の孤立化を防ぐため、四万十市や宿毛市に通じる国道321号の強靱化を最重要課題に挙げている。同市長は「高さ34.5メートルの津波が来たら街は壊滅する。命を守るため、市民には逃げる意識を持ってもらうとともに、復旧・復興を迅速に進めることが重要だ」と述べている。
復興には物資輸送の確保が欠かせず、国道が分断されると陸の孤島化する恐れがある。津波で港が使用不能になれば、ヘリコプターによる空輸に頼らざるを得ない。橋本市長は国や県に対し、全国最大級の津波への危機感を強く訴え、土佐清水市の「命の道」である国道321号の強靱化やバイパス化を求めていく方針だ。
今後の展望と住民参加の重要性
土佐清水市の浸水面積は1,522ヘクタールに及び、高知市や南国市に次いで広い。また、市内の約3分の1の地域で震度7の揺れが想定される。東日本大震災や能登半島地震の教訓を踏まえ、住民が街を離れないよう、事前の計画策定が急務となっている。住民協議を通じて、実効性のある復興策を模索していくことが期待される。



