東京都民の「水がめ」として知られる小河内ダム(奥多摩町)の貯水率が30%台にまで落ち込み、平成時代以降で最も低い水準となった。都内に接近した台風6号でも水位は十分に回復せず、これから水道使用量が増える夏を控え、東京都は節水を呼びかけている。
水面下の丘が露出、観光にも影響
10日に小河内ダムを訪れると、普段は水面下にあって見えない丘が姿を現していた。水位が大きく低下し、茶色い斜面が湖を取り囲んでいる。娘とドライブで訪れた八王子市の会社員、谷正人さん(50)は「想像以上に減っていて驚いた。このまま水不足にならないか心配だ」と語った。
観光への影響も出ている。奥多摩湖は風光明媚な観光地だが、対岸まで歩いて渡れる2カ所の「浮橋」は、水位低下で両岸の橋の入り口に高低差が生じ、通行止めとなった。「奥多摩タクシー」を運行する岡田里志さん(49)によると、9日に奥多摩湖まで乗せた台湾人観光客は、楽しみにしていた浮橋が渡れず「いつになったら水位は回復するのか」とがっかりしていたという。
岡田さんは「数年前から雪解け水の流入が減っていると感じていたが、特に昨年秋ごろから水位が急激に下がった。10年近くここで運転しているが、こんなに水がない奥多摩湖は初めてだ」と話す。
少雨が原因、台風でも回復わずか
1957年に完成した小河内ダムは、貯水容量が約1億8500万立方メートルと関東地方でもトップクラスの規模を誇る。ダムの水は多摩川に放流された後、2カ所の堰で取水され、東村山浄水場などに運ばれる。多摩地域のほか、東部を除く東京都区部にも水道水を供給している。
都民の水道水の約8割は利根川・荒川水系に依存しているが、多摩川水系も約2割をまかなう。夏場の渇水で利根川などの水が不足した際には、供給量を増やす安全装置としての役割も果たす。
東京都水道局によると、小河内ダムの貯水率は昨秋から減少し、今年4月1日には平成以降で最低の32.4%まで低下。6月11日の平年(2016~2025年の平均)は82%だが、現在の貯水率は36.4%にとどまる。石橋明男・水運用専門課長によると、1月の降水量は平年のわずか9%で、その後も少雨が続いたことが原因だという。
今月3日には台風6号が接近し、同日の降水量は千代田区で182ミリに達したが、奥多摩町は89ミリにとどまった。同局によると、小河内ダムの上流域にある4カ所の観測所の降水量は平均80ミリ程度で、ダムへの流入量も毎秒30立方メートルほど。貯水率の回復は1.6%だけだった。石橋課長は「大量の雨が降れば流入量は毎秒数百立方メートルになることもある。恵みの雨になればと期待していたが…」と落胆する。
すぐの影響はないが、節水を呼びかけ
多摩川の水が減っても、利根川や荒川から水を供給できるため、すぐに都民の水道利用に影響が出ることはない。しかし、利根川・荒川水系のダムの貯水率も50%程度と平年より低い状態だ。小河内貯水池管理事務所の中村幸一所長は「水は限りある資源。水を流しっぱなしにするような無駄遣いをせず、引き続き節水をお願いしたい」と呼びかけている。



