南海トラフ地震への備え、能登半島の教訓から見る「3日では足りない」医療支援の現実
南海トラフ地震「3日では足りない」医療支援の現実 (07.03.2026)

超広域災害への備え、能登半島地震が突きつけた現実

将来発生が懸念される南海トラフ大地震や首都直下地震。これらの大規模災害は、人口密集地を含む広大な地域に甚大な被害をもたらす可能性が指摘されている。しかし、こうした超広域災害への対応は、災害派遣医療チーム(DMAT)にとっても未経験の領域が多いのが現状だ。どのように備えるべきなのか、その課題が浮き彫りになっている。

三重県の危機感、能登半島地震との類似性

南海トラフ地震による津波などの大規模被害が想定される三重県。2011年の紀伊半島水害以降、広域的な災害を経験していない同県では、災害医療体制の整備が急務となっている。県のDMATを統括する松阪中央総合病院(三重県松阪市)の谷口健太郎医師は、「災害医療に向き合えていなかったことは否めず、不安はある」と率直に語る。

そんな中、2024年に発生した能登半島地震は大きな衝撃を与えた。石川県内では幹線道路が寸断され、多くの集落が孤立。早期の安否確認や救助活動、物資の輸送が大きく妨げられる事態となった。谷口医師は、この経験が三重県にとって重要な教訓になると指摘する。

能登半島の地形を逆さまにすると、志摩半島をはじめとする三重県南部と地理的な状況が驚くほど似ている。もし南海トラフ地震で同様に幹線道路が寸断されれば、三重県南部の多くの地域が孤立する可能性が高い。その場合、全国から駆けつける医療支援チームが、3日以内に現地の病院に到達できない恐れがあるという深刻な現実が浮かび上がる。

「3日では足りない」事業継続計画の見直し必要

谷口医師は、各医療機関の対応計画について重要な提言を行っている。「各病院は、発災後3日でなく、7日ほどを見越した事業継続計画(BCP)を策定する必要がある」と強調する。能登半島地震の教訓から、従来の3日間を想定した計画では不十分であることが明らかになったためだ。

さらに、災害時の医療支援体制には他の課題も山積している。ドクターヘリや防災ヘリ、自衛隊ヘリなどが使用するヘリポートの整備不足、支援者の宿泊施設の確保など、インフラ面での備えが十分でない現状がある。

能登半島地震の支援活動にも参加した谷口医師は、具体的な改善点を挙げる。「トイレだけでも整備すると、支援者のストレスは大きく減る。能登の経験から、あれも足りない、これも足りないと考えるようになった」。この経験を踏まえ、DMAT隊員の配置計画など、さまざまなシナリオを想定した準備が進められているという。

南海トラフ地震への備え、時間との戦い

南海トラフ地震では、想定される被害の規模が桁違いに大きい。広域にわたる同時多発的な災害に対応するためには、従来の災害医療の枠組みを超えた準備が必要となる。谷口医師をはじめとする関係者は、能登半島地震で得た貴重な教訓を南海トラフ地震への備えに活かそうと、計画の見直しを急いでいる。

医療支援が3日以内に届かない可能性があるという現実は、被災地の医療機関だけでなく、地域全体の防災計画に大きな影響を与える。住民の避難計画、物資の備蓄、通信手段の確保など、あらゆる面での備えが問われることになる。

超広域災害という未曽有の危機に直面する日本。能登半島地震の経験は、南海トラフ地震への備えにおいて、「3日では足りない」という厳しい現実を突きつけた。時間との戦いが始まっている。