原発避難者の葛藤を記録 伊勢の出版社から書籍「原発のない町へ」発刊
東日本大震災から15年となる3月11日、東京電力福島第一原発事故の影響で三重県に避難してきた人々の思いを綴った書籍「原発のない町へ」が、伊勢市の出版社「月兎舎(げっとしゃ)」から発刊される。この書籍は、同社の季刊誌「NAGI 凪」で2020年から5年間にわたって連載されたルポルタージュを単行本化したものである。苦渋の決断で故郷を離れ、異郷の地で新たな生活を築く19人の避難者の生き様を克明に伝えている。
19人の避難者の声を収録 福島県と関東地方からの避難者が中心
書籍に登場するのは、大台町で農業を営む日本人初の宇宙飛行士でジャーナリストの秋山豊寛さん(83歳)をはじめ、福島県からの避難者が8人、関東地方からの避難者が11人である。いずれも避難指示区域外から自力で避難を決断した人々であり、それぞれが独自の経緯と葛藤を抱えている。
伊勢市の元高校教諭で、市民団体「原発おことわり三重の会」の柴原洋一さん(72歳)が、一人一人を丁寧に訪ね、インタビューを重ねた。三重県を選んだ理由、心の内に秘めた苦悩、国や東京電力への憤り、そして現在の生活状況について、率直な語りを記録している。
柴原さんの想い 原発反対運動から続く「謝罪と償い」の気持ち
柴原さんは、かつて中部電力が計画していた芦浜原発(2000年に白紙撤回)の反対運動に、1983年から参加してきた経歴を持つ。原発に反対しながらも、事故を防げなかったことへの「謝罪と償い」の気持ちを胸に、避難者への取材を続けてきたという。
例えば、福島県いわき市から伊勢市へ避難した男性は、福島に帰省する際に「いつまで逃げてんの。ここで生活しちゃあだめなのか」という声を聞くことがあると語った。男性は「それぞれが考えた行動だから、地元に残るのも避難するのもどちらも正しい選択だ。みんなと同じことをしないと許されない国なんだと感じた」と述べ、避難者としての孤独感や社会からのプレッシャーを明かしている。
誠実で勇気ある19人 被害者の声を後世に伝える使命
柴原さんは、「実名と顔出しで取材に応じてくれた19人は、自分が納得できないことに抵抗心を持った誠実で勇気ある人たちだ」と強調する。さらに、「原発事故があったことや避難者の存在が風化されることのないよう、今後も被害者の声を伝え続けていきたい」と決意を語っている。
書籍は四六判で256ページ、税込み価格は1760円である。三重県内の主要な書店やインターネット通販サイトなどで購入可能で、問い合わせは出版社の月兎舎(電話:0596・35・0556)まで。



