留置場での耳栓禁止措置が「人権侵害」と認定 福岡県弁護士会が県警に改善勧告
福岡県弁護士会(上田英友会長)は、警察の留置場で容疑者に対し耳栓の使用を許可しなかった事例を「人権侵害」と認定し、福岡県警に対して原則として許可するよう勧告しました。この勧告は2026年3月6日付で行われ、騒音環境下での被留置者の権利保護が強く求められています。
交通騒音で睡眠障害を訴えた容疑者の実態
問題となったのは、2023年5月末頃から福岡県粕屋署(粕屋町)の留置場に収容されていた男性容疑者です。同署は交通量の多い福岡東バイパスに近接しており、男性は継続的な交通騒音によって十分な睡眠が取れず、頭痛や強い不快感を訴えていました。
男性は複数回にわたり耳栓の購入と使用を申し出ましたが、県警は一貫してこれを許可しませんでした。粕屋署は弁護士会に対し、県警本部から「必要な指示が聞こえなくなる危険性や、隠匿や嚥下が容易になるなど、管理運営に支障を生ずる恐れがある」との回答があったためと説明しています。
法制度の不整合と未決拘禁者の権利保護
福岡県弁護士会は、現行の法制度における不整合を指摘しています。拘置所については法務省訓令で耳栓の使用が認められている一方で、留置施設を規定する国家公安委員会規則には明確な規定がありません。
「容疑者は処分が未決の地位にあるため、権利制限は限定されるべきだ」と弁護士会は強調。未決拘禁者の権利保護の観点から、耳栓使用の制限は過度な権利制限に当たると判断しました。
この問題を受け、弁護士会は国家公安委員長や法務大臣に対し、関係規則の見直しを求める要望書も提出しています。制度全体の改善を求める動きが広がっています。
県警の対応と今後の課題
福岡県警留置管理課の担当者は、現在の対応方針について次のように説明しています。「現在は個別具体的に検討し、使用可否を判断することとしている。被留置者の人権に配慮しつつ、適正な処遇に努めていく」
しかし、この「個別判断」の基準が不明確である点が問題視されています。弁護士会の勧告は、明確な基準に基づく一律的な許可を求めるものであり、今後の運用改善が注目されます。
この事例は、留置施設における被拘禁者の生活環境と人権保護のバランスが問われる重要なケースです。騒音公害が深刻化する都市部の警察施設では、同様の問題が潜在的に存在する可能性も指摘されています。



