春闘で賃上げ満額回答が相次ぐ 人手不足への「投資」としての賃上げ
2026年春闘は3月18日、集中回答日を迎えた。物価高や深刻な人手不足を背景に、大企業を中心に労働組合の賃上げ要求への満額回答が相次いでいる。企業側は賃上げを単なるコストではなく、人材確保と生産性向上への「投資」と位置づける姿勢を強めている。
自動車・電機・重工大手で満額回答が続出
トヨタ自動車は、賃金体系を底上げするベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)を含めた具体額は明らかにしていないものの、労働組合が「より物価上昇に配慮」して掲げた賃上げ要求に満額で回答した。これは6年連続の満額回答となる。同社総務・人事本部の山本正裕本部長は「生産性向上に向け、労使とも垣根なくやっていくための決意の表れだ」と述べている。
電気自動車(EV)戦略の見直しで巨額赤字が見込まれるホンダも、月額1万2千円のベア要求に満額で応じた。貝原典也副社長は「ホンダの競争力の源泉である『人』への投資に覚悟を持って向き合う」とコメントし、人材重視の姿勢を強調した。
電機業界では、電機連合が月額1万8千円という現行方式導入後最高額のベアを統一要求。日立製作所やパナソニックホールディングスなど主要12社のうち6社が満額回答した。電機連合の神保政史会長は「要求の趣旨に合った回答を引き出せた。会社側としても賃金引き上げの重要性を認識し、論議がかみ合った」と評価している。
重工業界では、三菱重工業、川崎重工業、IHIが月額1万6千円のベア要求に満額で回答した。
人手不足が最大の経営課題に
こうした高水準の回答の背景には、働き手の生活改善に加え、激しい人材獲得競争がある。法政大学の山田久教授は「企業は構造的な人手不足への対応が最大の経営課題となっている」と指摘する。
ただし、業績が低調な鉄鋼大手では、日本製鉄が1万5千円のベア要求に対し1万円、JFEスチールが7千円にとどまるなど、業種間で格差が生じている。
金属労協の回答額は過去最高に
主要製造業の労働組合で構成する金属労協によると、18日午後0時半時点で回答のあった大手49組合のベア回答額は平均1万5450円となり、比較可能な2014年以降で最高を記録した。うち32組合で満額以上の回答だったという。
金属労協の金子晃浩議長は「前年度の物価上昇を大きく上回る高い水準だ。組合員の生活不安を払拭するため、労使の社会的役割を果たしたものと高く評価したい」と述べている。
実質賃金のプラス転換定着は不透明
一方、イラン情勢の緊迫化などによるさらなる物価高懸念もあり、働き手が賃上げを実感できる実質賃金のプラス転換が定着するかは不透明だ。今後の交渉本格化や中小企業への波及が焦点となる。



