「尽くしても守られない」時代のキャリア戦略 20代の2割が副業で自己防衛
20代の2割が副業で自己防衛 会社依存からの脱却 (09.04.2026)

「尽くしても守られない」時代のキャリア戦略 20代の2割が副業で自己防衛

かつて、組織への忠誠と業務の習熟は、会社からの評価を得るための「正解」とされてきた。しかし、テクノロジーの急速な進展により、多くのスキルが「代替可能」となった現代では、働き手たちは自らの価値をどこに見いだすべきかという根本的な問いに直面している。この状況下で、特に若い世代を中心に、副業を通じてキャリアの自己防衛を図る動きが活発化している。

AI時代の不安と副業による救い

京都市の大手電子部品メーカーで一般事務として働く28歳の女性は、安定した職場にいながらも、「AIに仕事を奪われるのでは」という漠然とした恐怖感を抱えていた。転職活動を試みても、自分だけの武器が見つからず、不安は募るばかりだった。そんな中、知り合いの紹介で動画編集を副業として始めたところ、最初の収入は3万円ほどだったが、世界が一変したという。会社の外に評価軸を持つことで、「恐怖感から救われた」と語る。

この女性のように、「会社に尽くしても守られないなら、自分で自分を守るしかない」という焦燥に駆られる働き手が増えている。パーソル総合研究所の調査によると、昨年の正社員の副業実施率は11%と過去最高を記録し、20代に限ると約2割に達している。研究員の中俣良太氏(31)は、「前向きな挑戦というより、キャリアの自己防衛として広がっている」と分析。特にZ世代は、会社に自分の価値を委ねることへの不安を感じ、市場での自身の値段を確かめようとしているという。

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企業側の変化:副業解禁と複業の推進

働き手の意識変化に対応し、企業側も柔軟な対応を始めている。早くから副業を解禁してきたロート製薬は、本業と副業という区別を超えた「複業」という考え方を打ち出している。今月1日には、会社での勤務を週3日または週4日のみとする制度も導入した。人事総務部長の塚田歩氏(54)は、「社員は会社の持ち物ではない」と強調し、社外での経験が人材育成につながり、結果的に企業の力になると語る。

デジタル技術による業界の枠を超えた競争が激化する銀行業界でも、変化が進む。三菱UFJ銀行は2022年度に副業を解禁し、「自律的なキャリア形成を後押しする」と表明。年間約100件の届け出があり、担当者は社外で通用する力を意識させることで企業文化の変化を促したいと話す。

第3の居場所を求める若者たち

滋賀県出身のインフルエンサー、コウさん(27)は、大阪のハウスメーカーで新卒として働き始めた頃、「毎日、残業、残業。上がらない給料。定年まで続くのか怖くなった」と振り返る。限界を感じる中、SNSで「平凡会社員の自炊と自己成長」をテーマに投稿を始めたところ、共感を呼び、フォロワーは20万人を超えた。現在はSNSスクールを運営し、月収が1000万円を超えることもある。コウさんは、「SNSでは何者でもないひとが何者かになれる。自分の価値を市場が数字で正直につけてくれる」と語る。

また、大手ガス関連企業に新卒入社した山崎健太郎さん(27)は、年収500万円という「勝ち組」ながら、将来への不安を感じ、副業で始めた就活支援をきっかけに独立した。山崎さんは、「自分を認めてくれる第3の居場所を持つことが、今の時代を生き抜くための安心感かもしれない」と述べている。

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日本型雇用の安全神話崩壊と令和の生き残り戦略

若者たちが自らの人生を値付けしていく動きに対しては、「本業に専念すべきだ」という批判もある。しかし、彼らの背中を押すのは楽観的な野心ではなく、日本型雇用という「安全神話」が崩れる中で、組織に頼れなくなった切実な生き残り戦略だ。副業は、収入の補完だけでなく、関心分野への挑戦や自己実現の場としても捉えられ、政府の働き方改革によって普及が後押しされている。

このように、テクノロジーの進展と雇用環境の変化により、働き方の多様化が進む現代。会社への忠誠と依存だけが「正解」ではなく、市場での自身の価値を確かめながらキャリアを築くことが、新たな時代の生き方として定着しつつある。