豪州の教員は「子どもと働く審査」必須、日本版DBSとの違い浮き彫りに
オーストラリア・ニューサウスウェールズ州にあるシドニー・モンテッソーリ・スクールでは、1歳から18歳までの子どもたちが学んでいます。この学校では、教員を含む全職員が毎年1回、児童保護に関する研修を受けることが義務付けられています。研修では、子どもに対する身体的、精神的、性的な虐待の種類を確認した後、3〜4人のグループに分かれて具体的なケーススタディについて議論します。
例えば、「グルーミングとは何か?」や「保護者の許可なく教員の車で生徒を自宅まで送ってよいか?」といった実践的な質問が投げかけられます。同校で教える庄島美香さん(66)は、「教員は日々の業務に追われがちですが、年に一度でもこうした研修に取り組むことは非常に意義深い」と語っています。
「ワーキング・ウィズ・チルドレン・チェック」の厳格な審査
しかし、オーストラリアでは、教員など子どもと関わる職業に就く前に、さらに厳格な「審査」を受ける必要があります。それが「ワーキング・ウィズ・チルドレン・チェック(WWCC)」と呼ばれる制度です。この審査では、犯罪歴や児童に対するリスクが詳細に調査され、クリアしなければ子どもに関わる仕事に就くことができません。
シドニー・モンテッソーリ・スクールの児童保護方針文書には、WWCCに関する規定や、子どもの安全に関する懸念事項を報告する手順が明確に記載されています。このように、制度と実践の両面から子どもの保護を強化する仕組みが整えられているのです。
2026年導入の日本版DBSとの比較
一方、日本では2026年を目処に、教員や保育士などを対象とした日本版DBS(犯罪経歴証明書)制度の導入が検討されています。これは、イギリスの「ディスクロージャー・アンド・バーリング・サービス(DBS)」を参考にしたもので、性犯罪歴などがある場合に就業を制限することを目的としています。
しかし、オーストラリアのWWCCと比較すると、いくつかの違いが指摘されています。WWCCは単なる犯罪歴チェックに留まらず、継続的な更新と研修がセットになっている点が特徴です。また、審査の対象範囲や運用の厳格さにおいても、国際的な基準から見て日本版DBSはまだ発展途上の段階にあると言えるでしょう。
専門家の間では、「制度が機能しても、多くの問題は表面化しないまま潜在するリスクがある」との指摘もなされています。子どもの性暴力防止においては、審査制度だけでなく、庄島さんが実践するような継続的な教育と意識改革が不可欠です。オーストラリアの事例は、日本が今後取り組むべき課題を明確に示していると言えます。



