高校の就活がデジタル化、メタバース説明会や求人アプリで早期離職防止へ
高校就活デジタル化、メタバース説明会で業界研究促進

高校の就職活動がデジタル化、メタバース説明会や求人アプリで早期離職防止へ

アナログな高校の就職活動が、急速にデジタル化へとシフトしています。インターネット上の仮想空間で開催される合同企業説明会への参加や、スマートフォンで求人票を検索・閲覧できるアプリを導入する高校が増加中です。これにより、生徒が早期から企業や業界を研究し、早期離職を防ぐ効果が期待されています。

メタバースで広がる企業説明会の可能性

1月下旬、静岡市の静岡県立科学技術高校の教室では、約40人の1年生がパソコン画面を前に熱心に話し合っていました。画面には、メタバース内に設置された100社以上の企業ブースが、東京や大阪、福岡など20都府県別に並んでいます。生徒たちはアバターを操作し、仕事内容を紹介するパネルを読んだり、職場の様子を映した動画を視聴したりしました。

IT企業を志望しながらも、接客業にも関心を持つ佐野結菜さん(16)は、スマホ販売店などのブースを見て回りました。「気軽に様々な企業を閲覧でき、思いがけない業界に興味を持つきっかけになりました」と語りました。この仮想空間の合同企業説明会は、就職支援会社「ジンジブ」(大阪)が昨年9月に開設したもので、全国の高校生がスマホなどを通じて、時間や場所を問わず参加できるのが特徴です。

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同校の進路課を担当する池田康秀教諭(45)は、「実際の企業説明会は日程が限られ、生徒が足を運ぶハードルも高いです。1年生のうちからスマホで多様な企業に触れることで、職業意識が高まることを期待しています」と述べています。

求人票のデジタル化で就活効率向上

高校生の就職活動では、企業が学校に求人票を提出する「学校斡旋」が主流です。人気企業では校内選考が行われ、応募できる生徒が限られるほか、一定期間は応募先を1人1社に制限する慣行も残っています。求人の申し込みは3年生の7月に解禁され、9月中旬から面接などの選考が始まります。学校によっては数千枚の紙の求人票から希望の企業を見つけ出す必要があり、十分な調査をせずに進路指導教諭が勧める企業に応募する生徒も少なくありません。

厚生労働省の調査によると、新規高卒就職者(2022年卒)の約4割が3年以内に離職しています。この課題に対し、求人票をデジタル化し、生徒がスマホで気軽に閲覧・検索できるシステムを導入する高校が増えています。

三重県桑名市の県立桑名北高校では、毎年約90人が就職を希望し、若手人材不足の影響で近年2000枚以上の求人票が届いています。以前は就活期間中、担当教員が校内のパソコンで検索できるよう、一枚一枚の内容を手入力していました。求人票のコピーを求める生徒の行列が廊下にでき、閲覧部屋の混雑を見て帰る生徒もいたといいます。

2022年に求人票を学校の複合機で読み取り、インターネット上で管理するアプリを導入したことで、生徒はいつでもスマホやタブレット端末で就業場所や給与を比較できるようになりました。2年生もアプリに登録し、キャリア教育の授業で活用しています。進路指導部代表の井上和也教諭(56)は、「2年生から就活について考える生徒が増え、進路指導室を訪れる生徒が倍増しました。1年以内の離職率は以前の4割から約1割に減少しました」と効果を実感しています。

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このシステムを提供する「ハンディ」(東京)によると、利用校はサービス開始時の2021年の86校から、今年1月時点で2336校に増加しました。閲覧時間は日中と午後9時前後に集中しており、自宅で家族と応募先を検討する様子がうかがえます。

早期からの丁寧なキャリア教育が重要

リクルートワークス研究所の古屋星斗・主任研究員は、「高校生が様々な企業情報を手軽に閲覧できるようになり、家族やアルバイト先などの大人に就活を相談しやすくなりました。社会経験の少ない高校生がキャリアを考える上で、非常に有意義な変化です」と評価しています。一方で、「情報が大量になると、活用できる生徒とそうでない生徒の差が広がる可能性があります。求人票の読み方やアプリの使い方、就業体験など、丁寧なキャリア教育を早期から始めることが大切です」と指摘しています。

デジタル化が進む高校の就職活動は、生徒の職業選択の幅を広げ、早期離職の防止に貢献することが期待されます。今後も、技術革新と教育現場の連携が、より効果的なキャリア形成を支えていくでしょう。