改革を目指した校長が教職を去る背景
公立小・中学校で子どもの主体的な学びを目指す改革が相次ぐ中、この春、改革派と呼ばれた一人の校長が教職を去る。東京都新宿区立西新宿小学校の長井満敏さんだ。2023年度以降、通知表や単元テスト、宿題の廃止などを進めてきたが、定年退職よりも前に学校から離れる決断をした。その背景には、変わらない学校システムと素直すぎる社会の壁があった。
学校システムの問題点と改革の理想
長井さんは、教師がテストや点数を通じてではなく、一人の存在として子どもたちを見る学校を作りたいという理想を抱いていた。きっかけは、授業中に落ち着きがないことで有名だったある子どもの存在だ。教師たちは手を焼いているというが、放課後に遊んでいる時はすごく穏やかで、他の子と仲良くしている姿が印象的だった。
同じ子が、場が違うと全く違う顔を見せる。これは子どもが悪いのではなく、学校のシステム自体に問題があるのではないか。そう思うと、オセロの白黒が一気に変わるように学校の見え方が変わったという。
通知表と宿題の廃止による影響
通知表は単元テストの点数や授業への取り組み方をもとに評価するものだが、この作業は膨大で、教師が子どもを見るよりもテストの採点や序列化に必死になっていると感じた。宿題も同じく、評価のために「やらせている」感が強く、子どもを疲弊させ、自ら学びたいという意欲を失わせているように思った。
これらを廃止することで、教師も子どもも評価にとらわれ過ぎない、主体的な学びができるのではないかと考えた。しかし、改革は思うように進まず、学校が変わらないことに悩んだ。
改革がもたらした嫌悪感と社会の抵抗
長井さんは、改革がうまく進まない背景として、20年以上前に教育界で起きたある騒動を思い当たる。結果として、学校はあまり変わらなかったという。社会が素直すぎるため、既存のシステムに従う傾向が強く、改革に対する抵抗感が根強く残っているのだ。
校長室には自費で買ったクッションを置き、教室で落ち着いて過ごせない子を受け入れていたが、こうした試みも広がりを見せなかった。改革の理想と現実のギャップに直面し、教職を去る決断に至った。
今後の教育への展望
長井さんの経験は、教育改革の難しさを浮き彫りにしている。子どもの主体性を尊重する学びを実現するためには、学校システムだけでなく、社会全体の意識変革が必要だ。彼の取り組みは、教育現場に一石を投じたが、継続的な変化にはさらなる努力が求められる。
この春、長井さんが教職を去ることで、改革の火種が消えるわけではない。むしろ、彼の挑戦が後の教育者たちに影響を与え、より良い学校づくりへの道が開かれることを期待したい。



