デジタルツールで探究学習の新たな地平を拓く 教員向けセミナーが熱気に包まれる
中学受験サポートは3月3日、東京・大手町の読売新聞東京本社において、会員校の教職員を対象としたセミナー「探究×デジタルで学校を地域と世界へ開く」を開催しました。このイベントでは、静岡サレジオ高校の吉川牧人教諭による基調講演に続き、文部科学省学校DX戦略アドバイザーの寺西隆行氏との対談が行われ、ライブ配信も実施されました。首都圏や関西などから22校の教職員25人が参加し、熱心に耳を傾けました。
校内完結から脱却 デジタルが橋渡し役に
講演の冒頭、吉川教諭は、多くの学校で探究学習が「校内完結」に陥りがちな現状を指摘しました。「社会に開かれた探究を実践することで、生徒たちは大きく成長します。しかし、学校と社会の間の橋渡しは難しい課題です。ここでテクノロジーやデジタルツールが重要な役割を果たすと考えています」と語り、デジタル活用の意義を強調しました。
具体的な事例で示すデジタル活用の可能性
吉川教諭は、デジタルツールを活用した「社会に開かれた探究」の事例を二つ紹介しました。
- プロジェクションマッピングプロジェクト:静岡県掛川市の掛川城で7年間に13回実施。地元高校のパソコン部の生徒が映像制作と投影を担当し、掛川市や地元企業と協働しました。コロナ禍には、医療従事者への感謝を伝える映像を制作し、病院の壁面に投影。「学びの目的が『教員からの評価』から『公共への貢献』へと変化したことが最も印象的でした」と振り返りました。
- 国際協働プロジェクト:静岡サレジオ高校の生徒が、インドネシアの高校生と連携。イスラム世界の理解を深めるため、日本在住のイスラム教徒を招いた交流が発展し、オンラインでインドネシアのイスラム教学校の生徒と意見交換。その後、ヒンズー教の遺跡のパンフレットを共同編集し、英語版、インドネシア語版、日本語版を作成。この活動がきっかけで現地で遺跡の改修工事が行われ、「デジタルが探究を内向きなものから世界へとつなげました」と説明しました。
デジタルの危険性とバランスの重要性を議論
対談では、寺西氏が生成AIの虚偽出力「ハルシネーション」などの負の側面を指摘し、「デジタルツールを使った調べものには危険も伴います。バランスをどう取るべきでしょうか」と質問。吉川教諭は、「教員や大人が実体験に基づいてアドバイスすることが大切です。例えば、新聞取材では細かい確認が繰り返され、多くの人々の時間とお金がかけられています。デジタルを活用しつつ、一歩踏みとどまって信頼性の高い情報源を参照する姿勢が重要です」と応えました。
教員からの活発な質疑と実践的なアドバイス
質疑応答では、参加教員から「探究にデジタルを導入することに消極的な同僚への対応方法」などの質問が相次ぎました。吉川教諭は、「消極的な意見も尊重しつつ、生徒の成長につながることを丁寧に説明すれば、理解を得られるでしょう」と述べ、寺西氏は、「味方になってくれる人を見つけ、信頼関係を築くこと。また、消極派の教員のパソコンを最新のものに替え、使いやすさを実感してもらうことが効果的です」とアドバイスしました。
セミナー終了後には懇親会が開かれ、参加教員らが吉川教諭や寺西氏を囲み、さらに活発な議論を交わしました。このイベントは、デジタルツールを駆使した探究学習の未来像を描く、有意義な機会となりました。



