同志社国際中高、デジタル技術で教育変革を推進
同志社国際中学校・高等学校(京都府京田辺市)は、近年、デジタル技術を活用した教育の革新に積極的に取り組んでいます。2024年度に文部科学省の「DXハイスクール」に採択されたことを契機に、高度なデジタル機器や工具の整備を進めるとともに、情報授業のカリキュラムも大胆に改革。デジタルものづくりを通じて、生徒たちの学習姿勢や生活態度に目覚ましい変化が現れていると報告されています。本記事では、この2年間の取り組みを詳しく紹介します。
高度な機器で教員の想像を超える作品が誕生
主に高校生が学ぶ教室棟「啓真館」には、理科教室や家庭科教室に加えて「情報教室」が設置されています。ここには、3Dプリンター3台、レーザーカッター2台、ドローン2機、実習用ドローン15機、AR地球儀「アースボール」12台、STEAM教育教材「レゴ エデュケーションSPIKE」15個など、多彩な高機能機器がずらりと並んでいます。これらは、DXハイスクール採択に伴う補助金などを活用して整備されたものです。
この教室では、情報科の授業でさまざまなものづくりが行われています。例えば、2025年度の高校2年生の選択科目「情報2」では、生徒たちが3Dプリンターを使用して、クリスマスオーナメントや同志社創立150周年記念グッズを製作しました。DXハイスクール事業を主導する情報科の松野翔太教諭によると、生徒作品の中には、教員の予想をはるかに超えるレベルのものも見られるそうです。
「頭の中に浮かんだサンタクロースやトナカイのイメージを3D作品として形にするのは容易ではありませんが、生徒たちは自身のスキルとアイデアを巧みに組み合わせて、素晴らしい作品を生み出しています。課題製作において、多様な工夫が見られるようになったことは、大きな成果の一つです」と松野教諭は語ります。
3Dプリンターやレーザーカッターの使用は多くの生徒にとって初めての経験ですが、ものづくりの過程で試行錯誤を重ね、根気強く作品を完成させる姿が目立つといいます。パソコン上での3Dモデリングが成功しても、実際の印刷で細かいパーツが折れるなどの失敗は頻繁に起こります。こうした経験を通じて、生徒たちは想像を形にする難しさを実感し、目標達成に向けた忍耐力を養っているようです。
授業外でも活躍するデジタル機器
これらの機器は、情報科の授業以外でも幅広く活用されています。教員が在室している時間帯には、生徒が自由に情報教室の設備を使用できるため、休み時間に訪れて部活動で必要な道具を3Dプリンターで製作する生徒もいます。
「アメリカンフットボール部からは、戦術フォーメーションの確認手段として、ドローンを用いた上空撮影の相談を受けました。部活動や課外活動においても、情報教室の設備をさらに活用できるよう、環境整備を進めていきたいと考えています。生徒たちが気軽に利用できる教室づくりを目指しています」と松野教諭は強調します。
DXハイスクール申請の背景と今後の展望
同校がDXハイスクールへの申請を決めた経緯について、松野教諭は次のように説明します。「当時はICT環境の整備が不十分な状況でしたが、情報科の教員として、生徒たちに一段階上のものづくりを体験させたいという思いがありました。ICT機器の購入や環境整備という事業の趣旨と我々の意図が一致したため、応募に至りました」。
申請にあたっては、高機能ICT機器の整備と活用機会の増加、学校法人同志社のネットワークを活用した外部人材・コンテンツの導入検討などの目標を掲げました。DXハイスクール事業で求められる「情報2」や、より高度な内容を扱う高校3年生の選択科目「情報科学研究」「情報文化研究」は既に設置されており、2024年度に新規校、2025年度に継続校として指定されました。
採択後、同校は機器の整備と並行して情報授業のカリキュラム改革を実施。高校1年生の必修科目「情報1」、高校2年生の選択科目「情報2」に加え、2024年度からは「情報科学研究」も導入され、生徒から好評を得ています。例えば、「情報2」は例年30~40人が履修し、「情報科学研究」も2024年度に11人、2025年度に19人が選択するなど、関心の高さがうかがえます。
一方で、外部人材・コンテンツの活用については課題が残っており、学校法人同志社を中心に連携先を探す方針です。同校は、2026年度以降もDXハイスクールへの応募を続け、デジタル教育のさらなる推進を図る構えです。現在、実習用ドローンと「レゴ エデュケーションSPIKE」は4人に1台の割合ですが、2人に1台へと増やすための追加購入を検討中です。
松野教諭自身もスキル向上に努めており、授業でのドローン使用を見据えて「2等無人航空機操縦士」の資格を取得しました。「資格がなくても授業は可能ですが、指導者として体系的な知識や操縦スキルを備えるべきと考え、自己負担で取得しました。将来的には1等資格の取得も視野に入れています」と語ります。
教育環境充実の意義と生徒への期待
教育環境を充実させる意義について、松野教諭は心理学者マズローの言葉を引用して次のように述べます。「『金づちしか持っていない人には、すべてがくぎに見える』という言葉があります。金づちだけでは『たたく』という発想に限られますが、問題解決には適切な道具の選択が重要です。ネジにはドライバーが適しています。本校での授業や製作活動が、生徒たちにとって『道具を増やす場』となることを願っています」。
アドミッションズセンター主任の吉田恵都子教諭も、「学びたいことを学べる環境と時間が本校の特長です。DXハイスクール指定により、情報理工学に興味を持つ生徒が深く学べる設備が整いました。頭で考えたことを形にすることで、自ら考え、試行錯誤する機会が得られます。情報科での学びを、自身の思考と感覚を駆使するきっかけにしてほしい」と期待を込めます。
同志社国際中学校・高等学校は、デジタルものづくりを通じて、生徒の創造性や問題解決能力を育み、教育の新たな可能性を切り開いています。今後の展開に注目が集まります。



