ネット空間の「事故多発」に警鐘、文科省が「言葉の免許教習」でメディアリテラシー向上を推進
初対面での会話では気を使うのに、顔が見えないSNSになると、人は突然大胆になる傾向がある。この現象について、歌人の俵万智さんは言語学者の川原繁人さんとの対談で、会ったことがない人との「言葉だけ」のコミュニケーションは高度な技術を必要とすると指摘した。さらに、攻撃的な言辞が飛び交うネット空間を、「みんな無免許で好き放題に乗り回している印象があります。だから言葉の暴力や行き違い、事故が多発する」と例えている(講談社現代新書「日本語の秘密」)。
対面とネットのコミュニケーションの違い
表情や声色も判断材料となる対面のコミュニケーションとは異なり、言葉のやりとりだけで相手を斟酌し、かつ思いを伝えるのは、案外難しいことだ。SNSの暴力性をテーマにした小説「踊りつかれて」などの著作がある塩田武士さんも、2月に開催された「よみうり読書サロン」でネットの「事故多発」を話題にした。「匿名性で人はいくらでも残酷になり、(自らの)支配欲に気付かない。その危険性を認識しておくだけで、ずいぶん事故は防げる」と述べ、ネット空間の特性を理解することの重要性を強調している。
政府の動きとメディアリテラシー育成
こうした「事故防止」に向けて、政府も動き出した。文部科学省は次期学習指導要領に、情報を適切に判断し活用する能力である「メディアリテラシー」の育成を盛り込む方針を明らかにしている。具体的には、ネット空間の特性を理解し、情報を生かす力の向上を狙う取り組みが進められる見込みだ。これにより、ユーザーが言葉の技術を磨き、危険性を知ることで、ネットの安全性が高まることが期待されている。
ユーザー自身が「言葉の免許」を取るような教習を通じて、コミュニケーションスキルを向上させることが重要だ。ネット空間での健全な対話を促進するためには、個人の意識改革と教育の両面からのアプローチが不可欠である。今後の成果に注目が集まっている。



