同志社女子高で数学探究グループ「Mathematics」結成 リベラルアーツ教育が育む好奇心
同志社女子高で数学探究グループ結成 リベラルアーツ教育が育む好奇心

同志社女子高で数学探究グループ「Mathematics」が結成 リベラルアーツ教育が育む好奇心

同志社女子中学校・高等学校(京都市)で、高校生による数学探究の有志グループ「Mathematics(マスマティックス)」が結成された。同校が重視するリベラルアーツ教育が生徒の数学への関心を育んだと言え、活動は学内外で広がりを見せている。昨年の文化祭での展示・発表内容とともに、数学教育のユニークな取り組みを紹介する。

数学の楽しさを感じるカリキュラム構成

グループ名は数学を意味する英単語「Mathematics」。メンバーは代表の當麻菜々子さんら高校1年生4人で、昨年10月の文化祭で数学に関する展示・発表を行ったことをきっかけに結成された。

當麻さんの数学への好奇心が育まれたのは中学時代だ。履修範囲に飽き足らず、先生に個人的に質問することが多かった。「三角形には、オイラー線という不思議な線がある。調べてごらん」と水を向けられた當麻さんは、調べを進めるうちに九点円にたどり着き、さらに三角形の虜になる。数学教諭が興味や疑問を受け止めてきたことが、當麻さんを数学好きに導いた。

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同校は、中学入試の合格者に対して「数学について書かれた本」の読書感想文を課すことで、得点至上主義である受験算数から意識を転換させるようにしている。入学後の中学の授業でも、たとえば同一の多角形からなる「正多面体」についての学習で、生徒が思い思いの材料、デザインで正多面体を製作・展示するなど座学一辺倒ではない試みを行っている。生徒が学問としての面白さ、奥深さを感じられるようなカリキュラム構成となっており、幅広い教養を身に付けるリベラルアーツ的な数学教育への取り組みが當麻さんや他のメンバーの数学への関心を高めたことは間違いないだろう。

大盛況だった文化祭の数学体験コーナー

中学時代に数学の楽しさに目覚めた當麻さんら4人は、昨年10月の文化祭で数学の奥深さを考え、体験してもらうコーナーを展示することになる。展示会場はまるで「数学ミュージアム」のような雰囲気だったという。

壁にはびっしりと、数学を楽しく学べる説明が書かれた模造紙のポスターが貼られた。公式で何を求められるかがイラストで一覧できる「いくつ知ってる? 三角形の面積公式」や中村久美子校長ら教諭陣の「好きな定理」をまとめたポスターなどだ。

机には立体作品が展示された。赤や緑、黄色などカラフルな厚紙で作った多面体の工作物の横には、「立方八面体が20コつなげてあるよ。面の数を答えてくれ!!!」という設問を用意した。体験コーナーでは、参加者が手芸モールを折り曲げて正四面体をつくり、シャボン液に浸して面を観察できるようにした。

在校生だけでなく、同校への入学を希望する多くの受験生とその親も足を止める盛況ぶりだった。メンバーの一人、松井文さんが振り返る。

「小学生にはシャボン液の実演が人気でした。保護者の方々は数学を離れてからブランクがあるので、みそ汁の温度低下の実験結果を見て納得されていました。熱心に質問してくださったので、私たちも分かりやすく伝えられるように一生懸命説明しました」

多彩な教諭の専門分野、様々な視点から数学指導

「Mathematics」顧問の奥田真梨教諭(数学科)は、生徒が自発的に動き始め、展示までこぎつけたことに手ごたえを感じている。卒業生の多くが同志社大学や同志社女子大学に進学する環境にあって、「大学受験のためだけの学びではなく、純粋に数学という学問を通じて抽象的な概念を理解し、背景にある歴史なども楽しんでほしい」との思いで教壇に立っているからだ。

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中高で11人の数学科教諭の専門分野は様々だ。奥田教諭は同志社大工学部で情報工学を学んだ。生命工学を修めた教諭もいる。地震を研究していたという草場理志教諭は「様々な視点から数学指導にアプローチすることで、教養としての数学が生徒たちに浸透することに期待しています」と語り、「Mathematics」の活動をサポートする。

文化祭での企画展を目の当たりにして、中学1年生から高校1年生までの10人が「Mathematics」への加入を希望しているという。奥田教諭は「この盛り上がりを、次の文化祭まで支えていきたい。数学を楽しむ仲間の姿を見ることで、高校で理数科目を選択してみようとか、ほかの生徒の刺激にもなれば」と期待を寄せる。

「Mathematics」の活動は外にも広がる。昨年12月、京都府立洛北高校が開催する探究学習のコンテスト「洛北数学探究チャレンジ」に参加。今後は奥田教諭が顧問の自主ゼミを開催し、新規メンバーも交えて、コンピューターを用いた数理解析などに取り組むことを検討している。

「数検」受検者が増加、学習のモチベーション高める

同校ではリベラルアーツ的な数学の学びを補完するために、2006年度から「数学検定(数検)」への受検をスタートさせている。数学を学ぶモチベーションを高め、学力を向上させるのが目的だ。

当初の受検者数は数十人程度だったが、2020~24年度の5年間で約160~350人の生徒が受検するまでになった。日本数学検定協会が「積極的に算数・数学の学習に取り組んでいる個人・団体」を表彰する「数検」グランプリ金賞を学校が3度も受賞している。

奥田教諭は近年の状況を「友だち同士で『上の級に挑戦しよう!』と誘い合ったり、未習分野があると自分自身で勉強したりと、自主的に受検しています。対策講座は設けていませんので、放課後、生徒自ら教員に質問にくることもあります」と語る。

卒業生で同志社大2年の安達真唯さんは2023年7月、高校3年で準1級に合格した。中学1年生の5級からスタートし、結果を積み重ねてきた。「中学受験では算数は普通の成績でしたが、同志社女子で『概念』に楽しく触れる教育を受けたことで、数学を好きになれました」。準1級のころには、「数学は一番の得意科目だから」と合格にこだわった。

幅広い教養を身に付けるリベラルアーツ教育を行っている同校だからこそ、生徒は数学嫌いにならず、数学の奥深さ、楽しさを体感できるようになる。その教育の土壌から、「Mathematics」のような探究活動グループや数検に根気強くチャレンジする生徒たちが生まれたと言えるだろう。