縦割り学習が全国の学校で拡大 上級生と下級生の学び合いが効果を発揮
異なる学年の子どもたちが一緒に学び合う「縦割り学習」を取り入れる学校が、日本全国で広がりを見せている。この取り組みは、上級生には責任感を育み、下級生には憧れを抱かせることで、学習内容の深い理解につながっている。新型コロナウイルスの感染拡大で制限されていた対面での交流が回復する中、縦割り学習は対人スキルの向上にも一役買っている。
福岡県筑前町の三輪中学校での実践例
福岡県筑前町の町立三輪中学校では、朝活動の時間を利用して縦割り学習を実施している。例えば、数学の授業では、上級生が下級生に問題の解き方を丁寧に解説する様子が見られる。3年生の男子生徒は「説明力を磨くことで、問題についてより深く理解できるようになった」と語り、女子生徒は「教える責任感から、家で進んで自習する習慣が身についた」と利点を強調した。
2年生の男子生徒は「先輩に質問すると、すぐに分かりやすく教えてくれるので、自分が教える側になった時の参考になる」と喜びを述べている。同校では2023年度からこの取り組みを始め、上級生の自覚や学習理解の深化が確認されている。
人間関係の構築とコミュニケーション能力の醸成
佐藤秀和主幹教諭は、縦割り学習が生徒同士の人間関係構築に寄与すると期待する。コロナ禍でマスク生活が長引いた生徒たちにとって、相手の表情を見ながら会話する体験は、コミュニケーション能力の向上につながると見込まれている。また、近隣の小学校から入学する生徒が多いため、学年を超えた交流を促すことで、高校入学後の人間関係にも備えている。
今年度は、中学1年生が小学校の5年生を教えるなど、縦割り学習の対象が拡大しており、学校文化として根付かせたい意向だ。
鹿児島県指宿市の魚見小学校での取り組み
鹿児島県指宿市の市立魚見小学校では、月に一度の授業で縦割り学習を行っている。児童たちは班に分かれ、上級生が下級生の質問に答えたり採点したりする。特別支援学級でも実施され、上級生は学びを深め、下級生は上級生の姿勢に憧れを見せている。
掃除や遠泳大会でも縦割りのグループを編成し、鈴木博信教諭は「人間関係づくりやチームワークの育成に効果的だ」と手応えを語る。
山口県光市の島田中学校での事例
山口県光市の市立島田中学校では、昨年6月に初めて縦割り班を結成し、家庭学習ノートや定期テストの勉強法を紹介し合う機会を設けた。掛谷智美教諭によると、3年生にはリーダー性が発揮され、下級生はノートの書き方などで刺激を受けたという。
その後も委員会活動や休み時間で学年を超えた交流が続き、掛谷教諭は「異学年の交流は中学で減少しがちだが、集団で学ぶ機会はコミュニケーション上、非常に重要だ」と述べている。
教育現場での二極化と今後の展望
文部科学省は、ICT活用による「個別最適な学び」と対話を通じた「協働的な学び」の充実を図っている。中央教育審議会では、2030年度以降の指導要領について議論が進められ、学び方の効果的な組み合わせが重視されている。
鹿児島国際大学の内山仁准教授は、「コロナ禍後、協働的な学びを積極化する学校と、ICTを活用した一斉授業を継続する学校で二極化が進んでいる」と分析。さらに、「ICTやAIを道具として使い、友達との対話を通じて学びを深めるべきだ」と提言している。



