高崎市の「朝7時開門」方針に教職員が猛反対、児童の安全懸念が噴出
群馬県高崎市が2026年4月から、市内すべての小学校の開門時間を現在より最大50分早い午前7時とする方針を決定したことに対し、教職員の間で強い反発が広がっている。この方針は、共働き世帯などが直面する「小1の壁」対策として導入されるものだが、児童の安全管理体制が不十分であることや、教育現場への負担増加が懸念されている。
教職員の99%が反対、市教委との対立が深刻化
高崎市教育委員会は、保護者の仕事と子育ての両立を支援するため、開門時間を早める「7時開門事業」を推進している。しかし、全群馬教職員組合(全群教)と高崎市教職員組合は、事業の撤回を求める要求書を4度にわたり提出。2025年1月に実施された教職員対象のアンケートでは、「再検討すべき」が1236件、「このまま実施すべき」はわずか11件であり、回答者の実に99%が反対意見を示した。
全群教の田中光則執行委員長は、「子どもの人権も教職員の人権も軽視されている」と憤りを露わにする。市教委側は「開門を30分早めるだけの立て付け」と説明し、見守り人員の配置は行わない方針を強調しているが、教職員側はこれに強く反発している。
安全管理体制の不備が最大の焦点
教職員が最も問題視するのは、児童の安全確保だ。市教委は、各校で早番の校務員1人が開門作業を担うとしているが、登校後の児童の過ごし方は「各校の実情に応じて」と学校任せ。見守り員は配置せず、管理職や教員の早朝出勤も求めないという。
これに対し、市内の小学校で働く40代の男性教員は「校務員は不審者警戒で校門を見る必要がある。誰が児童のケアをするのか。子どもは置き配の荷物ではない」と指摘。田中氏も「問題がないのは、勤務時間より早く出勤した教員が対応しているからだ。けんかやけがは日常的に起きている」と現状を訴える。
市教委はトラブル発生時について、「校務員が管理職に連絡し、指示を仰いで対応する」と説明するが、教職員側は「制度設計のない無責任な仕組みでは、子どもの安全や保護者の安心は守れない」と批判する。
他自治体の事例と専門家の見解
子どもの「朝の居場所」づくりは、東京都三鷹市などで導入が進んでいる。三鷹市では2023年秋から、市立小全15校で開門を午前7時半に早め、シルバー人材センターの職員2人が校庭で児童を見守っている。同市教委は「教職員に負担を極力かけない仕組みを重視した」と語り、人材確保の難しさを指摘する。
こども家庭庁の調査では、朝の居場所づくりを実施または検討している自治体はわずか3%で、未実施の自治体の70%が「人材確保が難しい」と課題を挙げた。
新潟県立大学の植木信一教授(児童福祉)は、「自治体が保護者ニーズばかりに気を取られ、子どもの安全や健全育成の観点を怠れば本末転倒だ」と警告。日本女子大学の大沢真知子名誉教授(労働経済学)は、「企業側が労働時間を柔軟化させることで解決を図るべきだ」と提言する。
教育現場の疲弊がさらに進む懸念
高崎市議会は2026年度一般会計当初予算案で、開門事業に伴う校務員の時間外勤務手当として1900万円を計上し可決した。しかし、田中氏は「多くの先生が空気を読み、出勤時間を早めていくことで、教育現場の疲弊はさらに進む」と危惧する。
文部科学省の調査で公立学校の教員不足が深刻化する中、自治体が導入を決めても運用を学校任せにするだけでは、根本的な解決にはならない。社会全体で知恵を絞るべき課題として、議論が続いている。



