岐阜県のLRT構想、江崎知事の「やってみないと分からない」手法で始動 課題山積も議論本格化
昨年7月1日、岐阜県議会で江崎禎英知事が突如表明した次世代型路面電車(LRT)構想は、関係自治体や経済界に十分な根回しがないまま動き出した大型プロジェクトとして注目を集めている。しかし、江崎知事によれば、これは狙い通りの展開であり、議論を巻き起こしながら実現につなげる独自の手法を選択したという。
街づくりの起爆剤としての壮大な計画
LRT構想は、新幹線が停車する岐阜羽島駅と東海環状自動車道岐阜インターチェンジ間をつなぐことを念頭に置いた壮大な計画で、街づくりの起爆剤として期待されている。江崎知事は、周囲を十分に固めてから政策を発表するオーソドックスな手法とは真逆のアプローチを取っており、先に構想を明らかにし、たとえ敵をつくることになろうとも議論を活性化させる戦略を選んだ。
この独特な手法は、江崎知事が県商工労働部長を務めていた2009年から2011年度の時代に始まったとされる。知事が「あの言葉があったから今助かっている」と述懐するのは、宮崎県の商店街で聞いた男性店主の言葉だ。「周りの意見を聞いてばかりでは何も進まない。どんどんやっていかないとだめだ」という助言を受け、部長時代に岐阜市中心部の柳ケ瀬商店街で、地域活性化のために男女の出会いの場を設ける街コンを企画した。
成功体験が生かされる知事の手法
当時、自治体主体で開く同様のイベントは一般的ではなく、周囲からは成果を疑問視する声が多かったが、当日は「大盛況で成功を収めた」と江崎知事は振り返る。「何事もやってみないと分からない」という信念が、当時の成功体験として知事となった今も生かされているという。
しかし、1千億円以上の費用が見込まれるLRT事業は、柳ケ瀬の街コンとは比較にならない規模で、関係先も段違いに多い。現状では、費用面や街づくりで協力が必須となる岐阜市や名古屋鉄道が事業に前向きではなく、県議会最大会派「県政自民クラブ」の重鎮県議は「どうやって事業を前に進めていくのか見えない」と首をかしげる状況だ。
検討会立ち上げで本格化する議論
3月23日には、岐阜市や名鉄、県などの関係先がテーブルにつき、岐阜圏域の新たな交通システムを議論する検討会が立ち上げられた。LRT構想は、議会での表明から約8カ月を経て本格化しつつあるが、一方で、議論が進まなければ批判の矛先は、急な発案をした江崎知事に向かうことが予想される。
重鎮県議は危機感を帯びた口調で「LRT構想は江崎県政の足かせになる」と予言し、課題が山積する事業を疑問視する声が多い中、皆が同じ方向を歩めるレールを敷けるかが焦点となっている。江崎流県政で最大の腕の見せどころと言えるこのプロジェクトは、今後の展開が注目される。
江崎知事の手法は、従来の政治スタイルに一石を投じるものとして、地域活性化や交通政策の在り方に新たな視点をもたらしている。岐阜県の未来を左右するLRT構想は、課題を乗り越え、実現への道筋が描かれるかが問われている。



