成田空港の滑走路新増設計画、用地取得難航で強制収用検討へ
成田国際空港会社(NAA)は、成田空港(千葉県)における滑走路の新増設計画において、必要な用地の取得が思うように進まない状況を受け、土地収用法に基づく強制収用の手続き検討を本格化させる方針を固めました。複数の関係者への取材により明らかになった情報によれば、NAAは近く国土交通省に対してこの方針を伝え、地元の理解を得た上で、早ければ6月にも手続きの申請を正式に決定する見通しです。
2029年供用開始の延期が避けられない情勢
成田空港の滑走路新増設計画は、「機能強化」と位置付けられており、具体的にはB滑走路(2500メートル)を北側に1000メートル延伸し、その南側に3本目となるC滑走路(3500メートル)を新設する内容となっています。この計画が実現すれば、年間の発着枠が現在の34万回から50万回に増加し、空港の処理能力が大幅に向上することが期待されています。
本体工事は昨年2025年5月に着手され、供用開始は当初2029年3月を目指していました。しかし、複数の関係者によると、NAAは国交省に対して、用地取得の状況を説明し、2029年3月の供用開始は困難であり、延期となる見通しを伝えるとみられています。NAAは用地確保の努力を継続しつつ、土地収用制度の活用も検討し、関係者との調整を進める方針を表明する予定です。
用地確保率88.4%で低迷、反対派の存在が課題
この機能強化計画では、新たに1099ヘクタールの用地が必要とされています。そのうち民有地は743ヘクタールに及び、NAAは元反対派を含む地権者との売買契約を進めてきました。用地確保の目標は「2025年度末にめど」と設定されていましたが、2026年2月20日時点での確保率は88.4%と低迷しています。
残りの用地は田畑や山林、事業所などが占めており、地権者の一部は計画自体に反対する姿勢を示しています。NAAの藤井直樹社長は、「極めて厳しい状況」との認識を示しており、用地取得の難しさが浮き彫りになっています。成田空港では開港前の1970年代にも土地収用が行われ、強引な手法が問題視された経緯があり、今回の強制収用検討は「禁じ手」とも呼ばれる敏感な課題となっています。
NAAは、地元との対話を重ねながら、計画の推進を図る方針ですが、過去の成田闘争を想起させる強制収用の可能性は、地域社会との摩擦を生むリスクをはらんでいます。今後の動向が注目される中、空港拡張をめぐる課題は、単なるインフラ整備ではなく、歴史的経緯と地域共生のバランスを問う複雑な問題として展開していくことになりそうです。



