名古屋市営地下鉄、全駅ホームから時刻表を撤去 経費削減でQRコード案内に移行
名古屋市営地下鉄の駅ホームから時刻表が撤去されたことが、市交通局への取材で明らかになった。スマートフォンの乗り換え案内アプリなどの利用者が増加する中、同局は経費削減を理由に挙げているが、乗客の一部からは「不便だ」との声も上がっている。この動きは全国の鉄道会社にも広がりつつあり、公共交通サービスの在り方が問われている。
撤去の経緯と拡大 2023年から段階的に実施
時刻表の撤去は2023年、桜通線の全駅で試行的に始まった。名古屋市交通局によると、「残してほしい」という問い合わせも一部あったものの、大きな混乱はなく、順次他線区に対象を拡大。昨年9月のダイヤ改定に合わせて名城線、名港線、東山線などの全駅で撤去を完了し、名古屋鉄道が管理する上飯田線上飯田駅を除いた全ての駅ホームで掲示がなくなった。
ホーム上でこれまで時刻表があった掲示板には、運行情報サイトへ誘導する二次元コード(QRコード)が貼り付けられた。利用者がスマートフォンで読み取ると、時刻表や運行状況が閲覧できる仕組みとなっている。
経費削減が主な理由 数百万円規模のコストを削減
撤去の理由について、同局は経費削減を挙げる。従来は、ダイヤ改定のたびに駅ごとに時刻表を作り直して貼り替える必要があり、印刷や人件費を含めて数百万円規模の費用がかかっていたという。担当者は「改札付近には今も時刻表を掲示しており、ホーム上の電光表示でも次に来る列車の時刻を案内しているため、利便性は保たれている」と説明する。
法的な位置づけと他都市の対応 全国的な動向
鉄道駅での時刻表掲示は、1942年に制定された国土交通省の「鉄道運輸規程」で義務づけられている。ただ、同省によると「掲示はホーム上である必要がなく、電光表示などで運行時刻が明確に示されていれば、規定の趣旨に合う」としている。
名古屋市営地下鉄の撤去に合わせ、読売新聞が取材したところ、公営地下鉄の多くがホーム上での時刻表掲示を続けている。札幌市営は「旅客サービスの低下につながる」、仙台市は「ホーム上で時刻表を確認する方が一定数存在する」としている。都営地下鉄(東京都交通局)や京都市も「撤去の予定はない」と回答した。一方で、横浜市は昨年11月のダイヤ改定でホームの時刻表掲示を取りやめた。
全国の鉄道会社でもホーム上の時刻表撤去が広がりつつある。西武鉄道は2022年度から大半の駅でホーム上での時刻表の掲示を取りやめた。JR東海やJR東日本も駅により掲示を取りやめており、いずれもダイヤ改定の度に生じる貼り替えなどの作業負担を軽減する狙いもあるとみられる。
専門家の指摘 公共交通の理念を問う声
公共交通に詳しい鉄道ライターの池口英司さんは「時刻表を経費節減のために減らすのは、本来の公共交通の理念を忘れたやり方だ」と指摘する。さらに「スマートフォンを使えない高齢者や障害者などの弱者を置き去りにしてまで効率を優先するのは間違っている。公共事業には赤字でも守るべきサービスがあり、駅ホームの時刻表もその一つだ」と批判的な見解を示している。
名古屋市営地下鉄の取り組みは、デジタル化と経費削減の両立を図る一方で、利用者全員への公平なサービス提供という課題を浮き彫りにしている。今後の動向が注目される。



