札幌新幹線延伸、2038年度末開業へ ビジネス好機と再開発遅れで期待と不安交錯
札幌新幹線延伸、2038年度末開業へ 期待と不安交錯

札幌新幹線延伸、2038年度末開業へ ビジネス好機と再開発遅れで期待と不安交錯

2038年度末頃の開業を目指す「札幌延伸」(新函館北斗―札幌間)は、当初目標から8年以上遅れる見込みとなっている。この計画は、ビジネスチャンスの拡大や人口増加、働き方の多様化に対する大きな期待を呼んでいる。一方で、開業時期の不透明さが再開発の遅れや不動産需要の減退を招き、先行きへの不安も広がっている。

ニセコエリアからの通勤圏拡大、外国人材獲得に期待

札幌市東区に本社を置くAI企業「AWL(アウル)」では、外国人社員が約8割を占め、タイやマレーシア出身のエンジニアらが活躍している。同社の社員は人気リゾート地「ニセコエリア」で余暇を過ごすことが多いが、現在のJR利用では札幌―倶知安・ニセコ間の移動に約2時間半を要し、冬場は支障が出ることもある。新幹線延伸により、この区間が約25分で結ばれれば、ニセコエリアが通勤圏となる可能性が高まる。

同社の上席執行役員、土田美那さん(48)は「ニセコでの在宅勤務と新幹線通勤を組み合わせた柔軟な働き方が実現できる。通勤費補助の検討も進めたい」と語る。タイ出身のワス・ワスサティエンさん(30)は「英語が通じるニセコエリアに住みながら都市部で働ける環境は、外国人材の札幌への関心を高めるだろう」と期待を寄せる。

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さらに、AWLは東北大学との共同研究を進めており、延伸により精密機器や研究者の往来が容易になれば、開発スピードの向上が期待できる。人材確保の面でも、札幌市内に開発拠点を置く大手ゲーム会社「セガ」は、延伸後には東北地方の学生からの採用応募が増加すると見込んでいる。同社は「帰省のしやすさが進路選択を後押しする」と指摘する。

不動産需要の減退と再開発の遅れが懸念材料

札幌市内では、ビジネスチャンスの拡大や転入人口の増加を見越し、マンション開発が活発化してきた。しかし、延伸の遅れが影響を及ぼし始めている。国土交通省が具体的な開業時期を明示していない中、大和ハウス工業北海道支店によると、2024年5月に開業遅れの見通しが示されて以降、2拠点生活やセカンドハウス利用層の申し込みが一時的に減少したという。

同支店の藤岡弘樹営業課長は「一部のシニア世代からは『新幹線の恩恵を受けられるのか不安だ』との声も聞かれる」と明かす。不動産マーケティング企業のインフォメーション・システム・キャビン代表、志田真郷氏は、札幌駅構内や周辺の再開発の遅れを指摘し、「利便性や将来性が実感できず、需要の高まりを欠きかねない。駅通路や新たなホームの工事、商業機能の向上を急ぐ必要がある」と訴える。

再開発計画の修正とオフィスビル建設の活況

札幌市内中心部では、延伸に向けた再開発が進むが、延期の影響も顕在化している。JR北海道などは、中央区北5西1、西2の両区画で大型ビルの再開発を進めており、商業施設やホテルなどを計画していた。当初は2028年度の全面開業を目指していたが、延伸延期や資材高騰の影響で、商業棟は30年度に先行開業、高層ビルは34年度目標に修正された。バスターミナルの再編や歩行者動線の整備も検討され、利便性向上が図られる。

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このほか、北1西5や北4西3、大通公園に面した「道銀ビルディング」跡地(大通西4)などでも、商業施設やホテル、オフィスを併設した大型複合ビルの開発が予定されている。オフィスビルの建設も活況を呈しており、ニッセイ基礎研究所によると、新規供給面積は2025年が約1・1万坪、2026年が約1・5万坪の見込みで、2023年以降4年連続で1万坪超となる見通しだ。

同研究所の吉田資上席研究員は「建設業界の人手不足が深刻化する中、開業時期の遅れで準備期間が生まれたともいえる。道外企業の進出や人口定着を促進し、開業効果を高めることがカギになる」と分析している。開業時期の不透明さが影を落とす中、期待と不安が交錯する状況が続いている。